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筋電図の臨床応用 (2)表面筋電図による筋活動の評価

(2)表面筋電図による筋活動の評価

神経-筋骨格系機能異常は、関節機能異常、関節低運動性(制限)や過運動性(異常可動域)、関節不安定性、筋力低下や麻痺、筋緊張異常、感覚障害、疼痛などさまざまです。さらに慢性状態となれば間違った学習による運動障害も加わり、さまざまな症状が複雑に絡み合っていることも多くなります。いずれにしても神経-筋骨格系の機能異常は運動障害を引き起こし、筋活動にも異常な状態が現れます。Physical Examinationに加え、表面筋電図による検査を加えることで、より詳細な病態を把握することが可能となります。

表面筋電図による評価の手順は、単独筋の筋電図から単純運動へ(シークエンステスト)、さらにより複雑な運動(実際の活動場面など動作関連)の筋電図評価へと進めていくと障害が理解しやすくなります(図1)。

筋電図の異常パターン

筋活動量(振幅・量的要素)の異常は、「活動が増加している」、「低下している」、「欠如している」の3パターンで評価します(図2)。
筋活動タイミング(時間的要素・時間経過と振幅の関係)の異常は、図3に示すように「活動初期」、「後期」「全体」に認められる筋電図所見から以下の7つのパターンで評価します。

・活動初期:早期出現、遅れ
・活動後期:延長、短縮
・全体:持続、欠如、フェイズからの逸脱

これらの異常パターンをもとに単独筋にて、さらに左右差や複数の筋間での協調活動性、筋活動の再現性、筋疲労をあわせて評価するとより詳細な解析ができます。(図4)。

シークエンステスト

シークエンステストは各関節の単純な運動を連続的に行わせることにより評価します。ここでは、腰部のシークエンステストを例にあげて説明します(図5)。腰部シークエンステストは電極を左右の脊柱起立筋や多裂筋に設置します。
まず、安静立位を取ります。この際、腰部脊柱筋の筋活動を観察します。正常ではほとんど活動がなく、さらに左右差もありません。
次いで、Flexion / Relaxation Phenomenon(屈曲-弛緩現象)を行わせます。体幹屈曲と共に筋活動は増加しますが、途中で筋活動が消失します。次に体幹を伸展し起き上がります。この時の筋活動は屈曲時より大きくなります。
さらに、腰部を過伸展させます。この際も、筋活動は消失するかわずかな活動になります。
回旋と側屈を行わせます。左右の筋で交互活動(活動の増加と減少)が認められます。

腰痛患者で腰部シークエンステストを見てみましょう(図6)。
安静立位では、左側の筋活動が高くなっています。FRPが認められません。体幹の屈曲位から伸展時、活動が低くなっています。腰部過伸展で左側の筋活動が消失せず活動が増加した状態が続いています。交互活動の非対称性が認められます。