Advance Sports & Rehabilitationアスリートの明日へ踏み出すチカラと、
それを支えるチカラ。
まずは、一年間、健康にプレーしたい。
そして「二刀流選手(Two-Way Player)」という
新ルールを導入したMLBの期待にしっかりと応えたい。

プロ野球選手

大谷翔平

今シーズン、二刀流での復活が期待されるエンゼルスの大谷翔平選手。MLBも、そんな大谷選手を応援するかのように、「二刀流選手(Two-Way Player)登録」という新ルールの導入を発表した。大谷選手本人は、自分の置かれた状況をどのように感じているのか。また大谷選手が、今、最も手に入れたいものだという「健康な身体」、そして、それをつくり維持するために日々取り組んでいることなどについても話を聞いた。

大谷翔平
写真=大野勲男・奥富義昭 インタビュー・文=石川遍 2020/01/16

「健康な身体」は、
プレーの質を見極めるバロメーター。

大谷翔平選手が今、一番欲しいものは「健康な身体」だという。
「昨年まではケガが多かったので、半分は自虐的な意味を込めて。でもこれはシーズンを目前に控えた今の僕の本心でもあります。というのも、僕は毎試合、自分のプレーを客観的に評価し、反省点があれば改善して次に繋げたいと思っています。けれど、もし身体が“健康”な状態でないと、試合で悪いプレーが出たときに、それが自分のスキル不足のせいなのか、それともコンディションが悪いせいなのか正しく判断できなくなるからです。僕はそれがすごく嫌で…。つまり、一年間を通して健康な身体を維持するということは、そうならないための大事な準備なんです」
要するに大谷選手にとっての「健康な身体」とは、彼が彼のプレーの質を評価するためのバロメーターみたいなものというわけだ。
「例えば昨シーズンは、手術後、肘に多少の違和感が残ったままプレーをしていたわけですが、バッティングでうまくいかなかったときにも、それが野球の上手い下手の問題なのか、それとも肘のせいなのか自分では判断できないことが何度かありました。とにかく、そういうことを全部なくしたいという思いがあります。そうすれば失敗したときは『練習してもっと上手くなろう』と思えるから、プレーしてても気持ち良いんですよ。もちろん一年間で160試合もしますから、軽度の捻挫とかがあるのは、ある程度仕方ないことだと思っていますが…」
野球に対してとにかく研究熱心な、実に大谷選手らしい考え方だが、意外にも、プロの野球選手になるまで、今ほど「健康な身体」を意識することはなかったのだという。

「10代の頃は身体も元気でしたし、どれだけ練習しても普通に動けるものだから、当時は自分が疲れているかどうかもあまりよく分かっていませんでしたね」
大谷選手によると、健康な身体を維持するためには、必要なときにしっかり身体を休めること、それが一番肝心だという。そして本人は、北海道日本ハムファイターズのおかげで、それを実感し、さらには理解できるようになったと話す。
「僕はもともとずっと練習していないと不安になるタイプでした。だから気持ち的には、毎日、練習する方が楽。それこそ昔はついやりすぎてしまって発熱する、なんてこともよくあったくらいです。けれどファイターズはNPBの中でも休養に対する考え方が進んでいた球団で、キャンプの際にも然るべきタイミングで休養をとるよう指導されていました。そのときの経験があったから、自分は若いうちに休養することの大切さを理解できたのだと思います」
ちなみに当時のNPBにはそうでない球団もたくさんあった。大谷選手はどちらかというとそちら側に多くいる追い込んで練習するタイプの選手だったので、今となっては最初の球団がファイターズで良かったと感謝しているそうだ。
「また、プロになってからはトレーニングやメディカルの専門家たちが、毎日、僕の状態を客観的に判断し、意見を言ってくれるようになり、それも休養に対する意識が変わるきっかけになったと思います。おかげで今は、張りや違和感があればすぐに休むようにしているので、練習をしすぎて熱が出るなんてこともなくなりました」

治療器を使うことが「1日のはじまり」

大谷選手に、今、健康な身体づくりのために行っている最も良い習慣は何かと聞いてみた。
「大事にしているのは睡眠です。今日は少し早く起きましたが、それでも9時間は寝てきました。あと昼寝も毎日1〜2時間はしています」
子どもの頃からもともと寝るのは好きだったというが、MLBでプレーするようになってからは時差の影響もあって、より一層、睡眠には気を配るようになったという。
「自分の感覚だと、睡眠が不足すると二日後くらいに身体に悪い影響がでます。なので登板日の二日前などは特に気をつけるようにしていましたね。ただあまり気にしすぎると、今度はメンタル的に良くないので、時には少しルーズに考えるということも意識しています」
ちなみに飛行機で移動する際は、耳から太陽光に似た強い光を照射する機器を用いて、時差ボケ対策などもしているという。
「良い習慣といえば、治療器も、使うことは癖みたいになっていますね。特によく使っているのがハイボルテージ電流治療器と、超音波治療器。チームにいるトレーナーの数は限られているので、試合前はどうしても施術の順番待ちになってしまうのですが、そういうときに自分のタイミングでセルフケアできる機器があるととても助かるんです。あと治療器の効果はメンタル面でも大きくて、治療器で丁寧にケアすることは『やるべきことをしっかりやっている』という自分への信頼にも繋がります。そうすると、たとえケガをしてしまったとしても必要以上に落ち込まなくてすむ。僕にとっては、ハイボルテージ電流治療器と、超音波治療器がそういう存在でした」

この2つの機器は、コンパクトで持ち運びにも便利なので、もう何年も前から遠征先にも必ず持っていくようにしているのだそう。その際、大谷選手が使っているようなコンパクトな超音波治療器は、アメリカでも珍しかったらしく、チームメイトからよく羨ましがられたそうだ。
「それから昨シーズンは、肘のリハビリをする前にも必ず超音波治療器を肘に使っていました。『これから動かし始めるよ』って、自分の中では、一日のはじまりみたいな感じ。ほぼ生活の一部になっていましたね」
ところで、肘のリハビリをしながら野手として毎日出場することは、精神的にも大変だったのではないか。そう思って質問すると本人からは思いのほか、飄々とした答えが返ってきた。
「自分には、打ってチームに貢献するというチャンスが用意されていたので、そこに関しては恵まれていたのかもしれません。投げられないからといってモチベーションが下がることはありませんでした。いつもより打つ機会が増えて、毎日、『今日もたくさん打ちたいな』と、普段と変わらず野球を楽しんでいましたよ」
よくいろんな場面でストイックだと評される大谷選手だが、そしてもちろんそれも事実ではあるのだろうが、きっと彼は、誰よりも野球のことが好きで、今もそれをずっと楽しみ続けているのだろう。

MLBの新ルールは率直にありがたいこと。
焦ることなく冷静に。でも期待にもしっかり答えたい。

ただ、だからこそ、今シーズンへの思いを聞いたときに「不安はまだあります」という答えが返ってきたときは、少し驚いた。しかしこれも大谷選手の野球に対する姿勢が表れた、彼らしい答えと言えるのかもしれない。実際、やってみないと自分でもどこまで動けるか分からない。それが正直なところだという。なので当面の目標は、一年間、健康に過ごすこと。そうやって身体の不調のせいにはできない状態を維持しつつ、自分の技術が今、どのような状況にあるのかを一つひとつ確認しながらプレーしていきたいのだそうだ。

「一方で、来シーズン、MLBには『二刀流選手(Two-Way Player)』という新しい登録枠が誕生します。あれだけ歴史のあるリーグで、僕一人のたった一年の実績に対して、このようなルール改正に踏み切ってくれた。これは率直にありがたいことだと感じています。改めてMLBってすごい組織だなと。自分としては、特に二刀流の選手が増えればいいとは思っていなくて、そうしたい人がいたらそうすればいいよといった感覚だったのですが、二刀流が普及することによって、野球のエンタテイメントとしての可能性が広がっていくということはとても素晴らしいことだと思っています。なのでこうした新ルールが設けられたからには、自分はそこでしっかり認められたいし、ルールのメリットを活かして、結果も残したいと考えています」と、いつも通りの冷静な表情で、そう決意を語ってくれた。
新ルールが導入されることで、MLBでは、これまで不可能だった野手出場とマイナーリーグでのリハビリ登板が可能になるという。無理のない形で投手復帰を目指しながら、打者としてはスタートダッシュを切りたい大谷選手にとってはおそらく追い風になるはずだ。背番号17がマウンドやバッターボックスで思い切り躍動する姿が今から楽しみで仕方ない。

※本インタビューのイメージ動画を公開中

プロ野球選手

大谷翔平

(おおたにしょうへい)

1994年7月5日生まれ。岩手県出身 身長193cm
右投げ/左打ち 背番号17
プロ野球史上でも稀な投手、野手を両立する二刀流選手で、球速165km/hのNPB最高投球記録保持者。※
2020年シーズンより"Two-Way Player"(二刀流選手)がルール上定義され、MLB初の適用選手となる。
花巻東高-北海道日本ハムファイターズ-ロサンゼルス・エンゼルス
【MLBでの獲得タイトルなど】※
・週間MVP(2回)
・ルーキー・オブ・ザ・マンス(2回)
・新人王(2018年)
・日本人初のサイクルヒット達成(2019年)
※2020年3月現在

大谷翔平 使用製品