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2章 3. 運動療法の分類と歴史

バイオデックスの紹介をするために、リハビリテーションにとっての筋機能を改善・増強するために運動療法は、その重要性と関係性が高いと考えます。現在の運動療法についてその歴史的な分類、定義など基礎的なことを一部ですが紹介します。

3-1運動療法の分類

「運動療法とは、障害や疾患の治療や予防のために運動を活用すること」(厚生労働省)と幅広い定義となっており、内科的疾患への適用も行われていますが、ここでは主に運動医学由来の整形外科的なアプローチに繋がる運動分類の歴史を一部ご紹介します。

・19世紀初頭にスウェーデン体操(この中の医療体操など)で「運動量」「運動方向」「速度」「リズム」を明確にすることや、運動の開始肢位及び終了肢位の重要性が発表されています。 Holding(現在の等尺運動)、Concentric Movement(短縮性運動)、Eccentric Movement(伸長性運動)などの語もこの研究によって定義されていると言われています。(Per Henrik Ling, 参考文献1)

・また筋機能を評価する手段として、著名なDanielsら以前に「徒手筋力テスト(MMT・Manual Muscle Testing)」を考案し発表しています。これは重力と抵抗の概念を含む検査方法として作成されたものです。(Wilhelmine G.Wright ,Robert W. Lovett, 参考文献2、3)

筋力トレーニングの方法として現在もその基礎となっている研究としては下記が著名と云われています。

・等張運動(Isotonic Exercise)を応用した「漸増抵抗運動」(Progressive Resistance Exercise;PRE)を発表しています。またRM(Repetition Maximum)の概念を導入しています。(DeLorme,1945年、1948年 参考文献4、5)

・等尺性運動(短時間Isometric Exercise)の有効性を発表しています。(Hettinger&Müller,1953年  参考文献6)

参考文献:

  1. P. H. Ling &Richard J. Cyriax M. 「Educational Gymnastics」 R. C. S. 697-704,Published online: 24 Apr 2013.American Physical Education Review, Volume17,1912-9
  2. Wright W.G. Muscle training in the treatment of infantile paralysis. Boston Med Surg J. 1912; 167: 567-574.
  3. Lovett R.W, Martin EG. Certain aspects of infantile paralysis and a description of a method of muscle testing. JAMA:66 729-733.1916
  4. Delorme T. L. Restoration of muscle power by heavy-resistance exercises. JBJS: 27(4)645-667, October 1945.
  5. Delorme T. L. Technics of progressive resistance exercise. Arch Phys Med:29(5),263-273,1948
  6. Muller E.A.  Hettinger T. The difference of training speed of atrophied and normal muscles. :15(3),223-30,1953

3-2運動療法の種類

運動療法には関節可動域訓練、歩行訓練、心肺機能訓練など幅広い種類があります。これらの中で用いられる運動の種別がいろいろあります。この動作が外力(他動)によるものか、自力(自動)によるものか、もしくは両方を用いるかによって基本的な運動の分類がなされています。

 

a. 他動運動(Passive Exercise)

外力による運動で本人の随意的な運動を行わない場合は筋収縮が殆ど起きません。徒手的な介助、モーターなどの駆動が可能な機器、重錘などによる外力も使用されます。

b. 自動介助運動(Active Assistive Exercise)

本人が筋収縮を起こし自力により動作を行いながら、徒手的な介助、モーターなどの駆動が可能な機器外力で補助を加える運動です。

c. 自動運動(Active Exercise)

本人が筋収縮を起こし自力による運動で自重以外の抵抗や介助は用いないで行う運動です。

d. 抵抗運動(Resistive Exercise)

抵抗に抗して行う運動のことで、徒手的な抵抗や、モーターなどの駆動が可能な機器、重錘などで外力を加える運動です。
これらを用いる運動療法の基本として、その種類、強度、持続時間、実施頻度などを含めて内容が決定されます。

一部ですが下記の様な各種の運動療法が行われます。

関節可動域改善の運動

他動運動、自動運動、自動介助ともに使用されます。
キーワードとして筋の収縮、筋の弛緩、拮抗筋、痙性、拘縮、等などがあります。

 

筋力増強運動

筋力増強運動とは筋収縮を起こさせる必要があり、大きな筋収縮を起こさせるためには抵抗運動が必要です。筋力増強のためには最大抵抗を与えるのが最も効果的といわれています。しかし最大抵抗を与えることは難しく、安全面からもこの最大筋力に対する抵抗の比率などを考慮した抵抗を決定し反復します。また漸増抵抗運動によって徐々に抵抗を上げていくことも効果があると言われています。

持久力増強運動

筋力増強運動は、負荷をできるだけ大きくし筋の反復回数を少なくするという元々の考えに対して、持久力増強運動は、負荷を低くし反復回数を多くするという考え方も用いられます。

協調性改善運動

運動の協調性とは、正常状態で運動を円滑に行うことができるということです。
運動時には多数の筋が同時に収縮することが要求され、それら多数の筋収縮の大きさと速さとが調和のとれたスムーズな運動に関係しています。これにはその運動に必要な筋群の収縮のみならず、不必要な筋群が弛緩することも重要です。一定の動作には、その動きを生じるための主動作筋が働き、協同筋や固定筋がこれを助け、その動きに対して反対の方向に働く拮抗筋は弛緩する。協調性に必要なこれらの機構は、主として筋、腱、関節などの固有受容器からのフィードバック、あるいは視覚や聴覚によって調節されています。
協調性訓練は最大筋力に比して弱い筋収縮による動作を頻回に反復する必要があります。

運動速度の増大運動(敏捷性の増大運動)

歩いたり立ったりの日常生活の動作では、大きな筋力をゆっくり発揮しているのではなく、必要とする瞬間にある程度の筋力を素早く発揮して成り立っています。
そのため運動療法(機能的運動)の最終の段階では上記の協調性訓練と併せて、運動速度を上げる訓練が必要になります。運動速度を早くするためには動作筋が素早く収縮し、同時に拮抗筋が素早く弛緩することが必要になります。運動速度には筋と中枢神経との作用が関係しています。

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