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筋電図の臨床応用 (4)さまざまな表面筋電図法

さまざまな表面筋電図法

表面筋電図が最も利用されているのは、筋全体としての活動状態を知る動作解析です。ここでは異なる観点から行われている表面電極を用いた筋電図学的解析について述べたいと思います。
筋電図は運動単位の活動状態を調べる手法です。1つの運動単位の活動や複数からなる運動単位の解析などさまざまな方法が考案され研究や臨床で用いられています(図1)。

 

個々の運動単位分離法

通常の表面電極は分解能が悪く、複数の運動単位から発生する活動電位を扱うこととなります(筋全体像を示す複合活動電位)。図2の電極を見てください。正方形の板の上にたくさんの突起がでています。この小さな突起がマルチチャンネル電極です。電極間距離をきわめて小さくすることにより運動単位をできる限り分離して解析する方法です。個々の運動単位が活動にどのような参加をするのか検討します。

誘発筋電図法

動作解析のような随意収縮ではなく、電気刺激により神経を刺激し、筋から得られる複合活動電位を解析する手法を「誘発筋電図」と呼びます。
誘発筋電図の中で最も行われているのは「神経伝導検査」です。運動神経の伝導検査は筋からの活動電位を導出するため、その波形をM波といいます。神経を刺激した時点からM波が発生した時点までの時間を計算し、その値で2点間の距離を割れば速度が計算されます。これにより軸索変性や脱髄の有無がわかります(図3)。

電気刺激の強度を徐々に増加させていくと、まず閾値の低い感覚神経から活動電位が発生します。神経は両側伝導のためインパルスは上行します。その興奮が脊髄内で運動神経を刺激し、運動神経から下行性インパルスが発生します。そして筋まで到達するとH波が導出されます(図4)。また、電気刺激を強くしていくと上行した運動神経インパルスが自らの細胞体に到達し、その電気により細胞体が発火し、下行性インパルスを発生させます。このインパルスが筋まで到達したとき導出されるのがF波です(図5)。H波、F波ともに、電気刺激部位より中枢側の神経障害や中枢神経系の機能を解析する目的で行われる検査法です。

Central Activation Ratio

最大努力で筋力を発揮している途中で電気刺激を加えることにより、現在、活動していない末梢神経を最大限活動させます。この手技を用いると図6に示すように筋力や筋電図振幅はさらに増加します。この増加分が正常の場合と比較して大きい場合、中枢神経系の機能が低下していることを示します。

運動単位数推定法(多点刺激法)

末梢神経をさまざまな部位で電気刺激(軽度な刺激)することにより小さな複合活動電位(M波)を得ることができます。その手法を繰り返し行い、そこから得られた多くのM波から単一運動単位電位を見つけだします。次いで最大電気刺激にて最大M波を導出します。この最大M波の振幅はすべての運動単位を刺激したことから得られたものであることから、単一運動単位電位の振幅で割ることにより運動単位数を推定することができます(図7)。