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「絶対に怪我をしない」
そう心に決めた瞬間から二人の躍進は始まった。

バドミントン選手/アメリカンベイプ岐阜バドミントンチーム

福島由紀・廣田彩花

近年、目覚ましい躍進を遂げている日本バドミントン界。特に女子ダブルスは、世界ランキングの1〜3位(7月30日付)を日本勢が独占し、まさに「黄金時代」を迎えている。今回は、全日本総合選手権で2連覇を達成するなど、その中でも特に勢いに乗っている福島由紀選手と廣田彩花選手、通称「フクヒロペア」(アメリカンベイプ岐阜所属)に、初めてのオリンピックレースへの意気込みや、遠征中のコンディショニング管理で気をつけていることなどを聞いた。

福島由紀・廣田彩花
写真=奥富義昭・椋尾詩 インタビュー・文=石川遍 2019/06/24

初めてのオリンピックレース、まずは二人で楽しみたい。

写真左から廣田彩花選手・福島由紀選手

東京オリンピック開催まで、あと1年。現在、さまざまな競技において、熾烈な出場権争いが繰り広げられているが、なかでも最も過酷と言われている競技の一つが、7月30日付の世界ランキングで1〜3位を日本勢が独占しているバドミントン女子ダブルスである。というのも、バドミントンの出場枠は、一つの国・地域から各種目2名、2組までという制限が課されている。そのため強豪ペアがひしめく日本女子ダブルスのオリンピック出場権は、世界ランキング3位ですら手に入れられないという狭き門なのだ。ただ、周りが「史上最も過酷」などと騒いでいるのに比べ、今回が、初めてのオリンピックレースだという二人は、いたって冷静で落ち着いている。
「そんなすごい舞台に自分たちが立てているのが光栄なことだなと思っています。だからまずは二人で楽しみながら、一戦一戦しっかりと戦っていきたいです」と福島選手が話せば、廣田選手も「まずはオリンピックレースを楽しみたい。そして自分たちらしい試合が毎回できるように頑張りたいです。あとはそれに結果がついてきてくれれば…」と続ける。

まさに息がピッタリな二人だが、実は、前回のリオデジャネイロオリンピックの出場権争いでは、それまで順調に結果を残していたにも関わらず、突如、失速。オリンピックレースに参加することすらできず、一時はペアを解消するにまで至っていた。
「自分は先輩だからリードしないといけないという気持ちが強く、一方、廣田は、私の言うことを何でも『はい、はい』と聞いてしまう、そんな関係が続いて、コミュニケーション不足に陥っていたんだと思います」と話す福島選手。一方、廣田選手も「そのとき、はじめて後輩とペアを組んだんですが、自分が相手を引っ張る立場になって、ようやくそれまでの自分が福島先輩に頼りっぱなしだったことに気づきました」と当時の様子を振り返る。
このペア解消が二人にとっては大きな転機となった。数カ月後に再結成した際には、試合中も互いに意見を言い合うなど、コミュニケーション不足は解消され、結束力も格段に増していた。そして二人は、2017年、はじめて日本A代表に昇格すると、同年4月、リオの金メダリストである高橋礼華選手・松友美佐紀選手の「タカマツペア」を破ってスーパーシリーズ(現在のワールドツアー)も初制覇。その後は、一気に世界ランキングを駆け上がっていった。

ハイボルテージ治療器は、
海外遠征時の必需品。

オリンピックレースでは、緊迫する試合が一年間、月に1〜2度のペースで海外を主戦場に続いていく。「何よりも大事なのが、一年間、怪我をしないこと。そしてコンディションを崩さないようにすること」と二人は口を揃える。
では遠征時にどんなことに気をつけているかと聞くと、二人からは「まずは食事」という答えが返ってきた。
「アジアで開催される大会であれば、日本食が食べられる店も多いので、さほど神経質にはならないのですが、ヨーロッパだと、自分たちで必ずお米を持っていくようにしています。あとは現地のスーパーで食材を買って鍋を作ったりもしていますね」と廣田選手。
福島選手も 「もともと少食ということもあるのですが、海外で試合が続くと、自分の場合は食欲がなくなって筋肉が落ちてしまうということがよくありました。今は、そうならないようにしっかりタンパク質をとったり、疲れているときは炭水化物をいつもより多めに食べるなど、いろいろと工夫しています」と続ける。
また最近は、超音波治療器とハイボルテージ電流治療器を必ず遠征先にも持ち込んで、これまで以上に身体のケアをしっかりするようになったという。
「治療器は、スタッフから勧めてもらって使うようになったのですが、ホテルの部屋でセルフコンディショニングできるのがとても助かっています。『絶対、怪我をしてはいけない』という状況で、疲労がたまってきたりすると、いろいろ不安になってくるものですが、この治療器があるというだけで安心感が全然違う。これも大きな効果の一つだと思います」と廣田選手。

廣田彩花選手

福島選手も「ヨーロッパ遠征に行くたびに、飛行機移動で足がパンパンにむくんでしまって苦労していたのですが、ハイボルテージ電流治療器をかけるとすぐに緩んで、次の日の体の動きがこれまでとは全然違いました。あと、筋肉の奥の方までほぐせるのもありがたい。自分は太ももの外側がよく張ってしまうので、練習後はいつもハイボルテージでほぐすようにしています。いまや遠征時の必需品ですね」と話してくれた。
ちなみに他にも必需品はあるのか尋ねると、「スピーカーとiPadは必ず持っていきます。最近はそれで三代目 J SOUL BROTHERSの曲を聞いてリラックスしていますね」と福島選手。一方、廣田選手は、「実家で飼っている愛猫ホルスの写真」とのこと。それを見ていると癒やされるのだそう。

福島由紀選手

アメリカンベイプ岐阜バドミントンチーム
岐阜県岐阜市を本拠地とするバドミントンチーム。社会人バドミントンチーム対抗リーグ戦である「S/Jリーグ」(旧 日本リーグ)に参戦している。アカデミーも設立し、ジュニアの育成にも力を入れている。

怪我をしなければ勝てるという確かな自信。

ところで廣田選手は、高校の頃まで、まさか自分がオリンピックを目指すような選手になるとは考えてなかったという。
「オリンピックなんて夢のまた夢という感じ。実業団に入るときですら、『何の実績もない私が入っていいのかな』って…、すごく迷いました。当時の監督に『最初から自信があるやつなんていない』と背中を押してもらってなかったら、今、ここにいることはなかったと思います」と廣田選手。一方、福島選手も、「オリンピックに出たいという気持ちは昔からありましたが、それが明確な目標だったかというと、ちょっと違うと思います。そういう意味では、私もペアを再結成して以降ですね。自分にも戦えるんじゃないかという自信がついてきたのは。今は、せっかくこのような戦いの舞台に立つことができたので、チャンスを無駄にしたくないという気持ちです」と話す。
リオデジャネイロオリンピック、女子ダブルスの決勝をテレビで一緒に観戦していた二人は、タカマツペアが金メダルを獲得した姿を見て、「四年後は自分たちが…」という気持ちになったという。
「この頃から、食事やコンディションに対しての意識が大きく変わってきたように思います」と福島選手。
例えば、先ほど触れた海外遠征時の食事の話も、以前はそれぞれが好きなものを好きなだけ食べていたそうだ。
「実はトレーナーの方にもこれまでずっと、『おまえたちはケアが全然足りていない』と言われていたんです。当時はよく分かっていなかったのですが、今、思えば、『絶対に怪我できない』という気持ちが、他のトップ選手たちに比べて弱かったのだと思います。怪我をしたら練習できなくなるし、試合にも出られなくなることは分かっていましたが、それを絶対に避けようという気持ちが自分にはそこまでありませんでした」と福島選手。それはつまり、今はそうした気持ちがしっかり芽生えたということだ。

最初に廣田選手も、「楽しくやって、それに結果がついてくれば…」という話をしていたが、二人の話を聞いていると、今は、「怪我をせずに、100%の力を出すことができれば、自分たちは勝てる」という確かな自信があるのだろう。改めて、二人に今の目標と、お互いのことをどのように思っているかを聞いてみた。
「もちろん目標はオリンピックに出場して二人で金メダルをとることです。廣田のことは…、いつでも果敢に前へ出てくれるところは本当に頼りにしています。あとはもうちょっと大きな声ではっきり喋ってくれたら文句なしの後輩です」と福島選手。
一方、廣田選手は「目標はもちろん金メダルです。福島先輩は、自分がどれだけ前に突っ込んでも絶対にカバーしてくれるので本当に頼りがいのある先輩です。あと競った展開になればなるほど力を発揮するところがすごい。直してほしいのは、朝、起きてくれないところくらいかな」と笑う。
ペア解消という経験を経て、さらに大きく成長した二人。オリンピックレースではどんな戦いを見せてくれるのか。とても楽しみである。

バドミントン選手/アメリカンベイプ岐阜バドミントンチーム

福島由紀・廣田彩花

(ふくしま ゆき・ひろた さやか)

福島由紀選手
1993年5月6日生まれ
熊本県出身
身長164cm
アメリカンベイプ岐阜バドミントンチーム所属
バドミントン世界ランキング女子ダブルス1位(最高位)

廣田彩花選手
1994年8月1日生まれ
熊本県出身
身長170cm
アメリカンベイプ岐阜バドミントンチーム所属
バドミントン世界ランキング女子ダブルス1位(最高位)

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