Advance Sports & Rehabilitationアスリートの明日へ踏み出すチカラと、
それを支えるチカラ。
女子卓球界期待の“成長株”が実践する
遠征時のセルフコンディショニング。

卓球選手/日本生命

早田ひな

2018年にスタートした卓球の国内リーグ、Tリーグで初代MVPに輝いた早田ひな選手(日本生命)。早田選手は2000年生まれの19歳。伊藤美誠選手(スターツ)、平野美宇選手(日本生命)らとともに日本女子卓球界の黄金世代と呼ばれ、今、最も勢いに乗っている選手の一人だ。現在は代表権を賭けて世界を転戦中という早田選手に、遠征時のコンディション管理で気をつけていることや、女性アスリートならではの悩みについて話を聞いた。

早田ひな
写真=大野勲男・奥富義昭 インタビュー・文=石川遍 2019/06/20

身長の急激な伸びが身体に関心を持つきっかけに。

166㎝の長身と、その長い手足を生かしたパワードライブ、そして守備範囲の広さを武器に、世界の舞台で活躍を続ける早田選手。昔はむしろ小柄で華奢な身体つきの選手だったという。
「子どもの頃は、自分と同じサウスポーで、両ハンドドライブ型の石川佳純選手のプレーを参考にしていました。それが海外の試合に参戦するようになった中学2年生頃から、急に身長が伸び始め、それまでの身体の動かし方だと、正面に来たボールをうまく打ち返せなくなったんです」と早田選手は振り返る。
コーチに相談すると、当時、世界ランキング1位だった中国の丁寧選手を参考にするようアドバイスされた。身長172㎝でサウスポーの世界女王はどんな卓球をしているのか。試合映像を何度も繰り返し観て、身体の動かし方やフォーム、ポジショニングを勉強したそうだ。日本の女子選手にはいない、卓球台から遠く離れて長い腕を振る丁寧選手のプレースタイルは、その時から早田選手の新しい見本になった。
「台から離れてプレーすることでドライブの威力が上がりました。ただ、動く範囲が広がり、スイングも大きくなる分、今度は体力の消耗が激しくなって、試合後半に失速してしまうという新しい課題が生まれました」
それを克服するために始めたのが、コーチも「ジュニアの中で一番厳しくした」と振り返る、トレーニングの徹底だったという。

日本生命体育館(大阪府貝塚市)

「まだ身長は伸び続けていて、筋トレをしても筋肉は全然つかなかったので、まずは疲れにくい身体づくりをしようと、下半身や体幹の筋持久力を鍛えるトレーニングに取り組みました。ボーッとしているとコーチに注意されるので、いつも身体のことを考えていましたね」
また、スタミナがもたないのは食事にも原因があると考え、栄養バランスのとれた食事として最近は海外でも注目されている「ごはんを中心とした和食」をいつでも食べるように心がけたという。
「国内にいるときはもちろん、海外遠征時にも、小型炊飯器とドライ米、さらにはスポンサーである福岡の明太子メーカー『ふくや』さんに相談して作ってもらった魚のパウチ料理を持っていくようにして、とにかく日本にいるときと身体の状態が変わらないように努めました」
ちなみに早田選手は、普段から体重の増減が大きく、飛行機でヨーロッパへ移動するとそれだけで体重が1〜2㎏増えるという。海外に行き始めた頃は、現地に到着してから無理な食事制限で体重を落とそうとした結果、必要な栄養まで不足してしまい、試合で本当の力が発揮できないという失敗を何度も繰り返していた。
「そんな様子を見かねて、その何年か後、5歳上の姉が私をサポートするために栄養士の資格をとってくれました。もちろんトレーニングコーチなどからもアドバイスはもらっていますが、同じ女性で体型も体質も似ている姉からのアドバイスは本当に心強く感じています」
他に何か遠征時に欠かせないものはあるかと尋ねると、「6歳のときからずっと使っているひよこ柄の毛布は手放せないかな」とはにかみながら答えてくれた。「ひな」という名前にちなんで昔、お母さんが買ってくれたというその毛布を、今も遠征先まで必ず持っていくのだという。

毛布同様、物理療法にも
ずいぶん助けられています。

「ホテルのベッドが柔らかすぎたり、逆に硬すぎたりすると、結構、気になるのですが、その毛布があるとなぜか大丈夫なんです。海外で普段どおりのプレーができるようになったのは、お姉ちゃんとお母さんによる栄養サポート、それから毛布のおかげです」と笑う。
早田選手が、自主的にコンディションを整えられるアスリートに成長していったのは、このように自分の身体のことや、その特徴を活かしたプレーについて真剣に考える習慣が、子どもの頃より身についていたからなのだろう。
「トライアルアンドエラーを繰り返して、自分にとってちょうど良いものを見つけるというのが習慣化しているのかもしれません。例えば、大会の日にゲーム開始の5時間前に起床して少し身体の動きが悪かったら、次の大会ではさらに30分早く起きて身体の様子を確認してみる。そういうことを自然と繰り返しながら、自分の状態を常にベストに保つ方法を探っているんだと思います」
そんな早田選手が物理療法に関心を持ったのは、自身の怪我がきっかけだったという。
「怪我を繰り返して癖になってしまったときに、以前、紹介してもらった超音波治療器のことを思い出し、すぐに担当者の方に連絡しました」
毎日、練習前に、浅層の治療に最適な3MHZの周波数でDUTYを100%にして、約1分間患部を温め、また練習終わりにはクールダウンとして今度はDUTYを20%に変えて約3分間照射していたそうだ。念の為、付け加えておくが、ここで触れた治療器の具体的な使い方はトレーナーではなく、すべて早田選手が説明してくれたことである。
「試合の時も会場へ治療器を持っていくようになり、一時は、『超音波治療器があるから自分は今日も安心して戦える』というくらい信用していました」

怪我の繰り返しが落ち着いてから、毎日使うことはなくなったそうだが、今も肩や股関節の動きが悪いと感じた日はクールダウンの時に使用しているという。
「効果を一番感じるのは翌日。肩まわりの可動域がアップして、『あ、今日はいつもより打てているな』ってすぐに違いがわかります。股関節の詰まった感じも一晩眠るだけで解消されるのでとても助かっています。あと治療器といえば、実は最初に相談にのってもらった際、便秘で悩んでいるという話をしたら、ラジオ波温熱治療器でお腹のケアをしていただきました。翌日には、それまでずっと悩んでいた便秘が解消。さっきは栄養サポートと毛布のおかげと言いましたが、こうしてみると私は物理療法にもずいぶんと助けられていますね」

岡雄介トレーナー

ついに憧れの丁寧選手に勝利。
次に目指すは東京の代表権。

実はこの取材の少し前、札幌で開催されたITTFワールドツアープラチナ・ジャパンオープンの混合ダブルスに張本智和選手とのペアで出場していた早田選手は、準決勝で中国の丁寧選手/樊振東選手ペアと対戦。ゲームカウント3-1で見事勝利を収めていた。「最初は本当に雲の上の存在で、近くのコートで練習をしていたりすると何時間でも観ていることができた」という丁寧選手とは、どんな気持ちで戦っていたのだろうか。
「ずっと目標にしてきた選手。技術だけでなくて、経験も勘もやっぱりすごい。でもあのときは憧れというより、絶対に勝ちたいという思いが大きかったです。この選手に勝って、自信も一緒に手に入れたいという気持ちでした」
ただ、そうした力の入った言葉とは裏腹に、試合中の早田選手の表情はずっと笑顔だったので、その理由も尋ねてみると、「丁寧選手に勝ちたいって気持ちと同じくらい、男子世界ランク一位の樊振東選手のボールを受けるのが楽しかったんです。『こんなボールが来るんだ』『ここに打ったら通用するかな?』と一球一球に思いを馳せながら試合をしていたから、それで思わず笑顔になっちゃったのかも」と説明してくれた。

写真左:石田大輔コーチ 写真右:岡雄介トレーナー

このような心の余裕が、いつも通りのプレーに繋がり、そして勝利を呼び込んだのだろう。
現在、代表権を賭けて世界を転戦中という早田選手は、この大会の前にも、ハンガリーで開催された世界卓球選手権の女子ダブルスで、伊藤美誠選手とペアを組んで準優勝を獲得。ダブルスの巧さに定評のある選手として紹介される機会が増えている。しかし本人に話を聞くと、最後までシングルスにこだわっていたいそうだ。
「ダブルスで良い結果が残せているのには、私の体型であったり、サウスポーという身体的な特徴が有利に働いているところが大きいと思っています。だからそうではなく、誰にも文句を言われないような実力をつけて、シングルスでの出場を狙いたいと思っています。ぜひ、応援よろしくお願いします!」

卓球選手/日本生命

早田ひな

(はやた ひな)

2000年7月7日生まれ
福岡県出身 身長166cm 日本生命所属
4歳から卓球を始め、全国中学校卓球大会での
2連覇を皮切りにインターハイ、全日本選手権など
数々の国内タイトルを獲得。
国際大会でも世界選手権銀メダル、
プロツアー3大会連続優勝など国内外で活躍中。
【主な獲得タイトル】※
・世界卓球選手権ブダペスト大会
 女子ダブルス2位(2019年)
・ITTFチャレンジ ポルトガルオープン
 女子シングルス優勝(2019年)
・ITTFチャレンジ オマーンオープン
 女子シングルス優勝(2019年)
・ITTFチャレンジ セルビアオープン
 女子シングルス優勝(2019年)
・全日本卓球選手権大会
 女子ダブルス優勝(2018、2019年)
 女子シングルス3位(2019年)
・ノジマTリーグ2018-2019シーズン
 個人MVP賞
※2019年8月現在

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