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夢はただひとつ、世界のトップカーラーになること。

カーリングチーム

ロコ・ソラーレ + PHYSIT CONDITIONING

二度の冬季オリンピックを経験した本橋麻里選手の呼びかけで、ロコ・ソラーレは、2010年、北海道北見市にゆかりのある選手たちで結成された。2018年2月の平昌オリンピックでは、世界の強豪と互角に戦い銅メダルを獲得する。8月に新体制となったチームの4選手(吉田知那美、吉田夕梨花、鈴木夕湖、藤澤五月)と彼女たちの体づくりを支えるフィジット コンディショニング代表の大森達也チーフトレーナーに話を聞いた。

ロコ・ソラーレ + PHYSIT CONDITIONING
写真=大野勲男・奥富義昭 文=丸山有美 2018/08/29

まず、きちんとご飯を食べることがトレーニングだと言われました。

ロコ・ソラーレ北見チーフトレーナー
大森達也
TATSUYA OMORI

大森トレーナーはロコ・ソラーレ以前にカーリングチームのサポートをされたことはありますか。

(大森)ありません。6年ほど前に、腰を痛めた本橋選手の治療をした時に、彼女から選手としてのリハビリも含めてアスレティックトレーニングもやりたいと打ち明けられて、治療にそういうメニューを取り入れるようになったのがきっかけです。その後、チームのトレーナーになってもらいたいと言われましたが、当初はメニューを提供するとか、休みの日に手伝うとか、やれる範囲のサポートのみでした。平昌オリンピックに向けたタイミングで独立して、2017年1月にメディカルフィットネスを提供するスポーツジム「フィジット コンディショニング」を立ち上げて以降、専属で手伝えるようになりました。月曜・祭日の休業日以外、選手たちは1、2時間トレーニングに来ています。

Second
鈴木夕湖
YUUMI SUZUKI

鈴木選手、吉田(夕)選手、大森トレーナーがサポートに入る前と後で変わったことを教えてください。

(鈴木)一番最初は、きちんとご飯を食べることがトレーニングだと言われました。先生と会った頃は、今より5キロくらい体重が軽くてひょろひょろだったんです。メニューを渡されてトレーニングをするようになったのも先生が来てからです。それまでは単純に筋トレをしていましたが、全体のコンディショニングを整えて動ける体を作っていくトレーニングに変わりました。
(吉田(夕))わたしも特に肩周りとか、太ったわけではなく大きくなりました。試合後も以前はぐったりして何もしたくなかったのですが、今は疲れにくい体になっているのを実感しています。先生に会ってから自分の体について知ること、考えることが多くなりました。アスリートなら当たり前なのかもしれませんが、それができていなかったんです。

別の実業団チームから移籍された藤澤選手、吉田(知)選手は、以前と比べていかがですか。

(藤澤)前のチームではウエイトトレーニングを主にやっていました。ロコ・ソラーレに移ってからは体が硬いとよく言われるのですが、関節の可動域の広さや体の柔軟性がないと筋力をつけても活かせないというのは、先生のトレーニングを受けてから知ったことです。自分の体の弱点を知って鍛えるのは言ってしまえば地味な取り組みですが、それがいかに大切なのかが今はわかります。
(吉田(知))ソチオリンピックの前あたりから、カーリング選手がやるべきトレーニングについて言及され始めて、前のチームでも技術的なノウハウだけでなく弱点を把握したトレーニングにはかなりしっかり取り組んでいました。ロコ・ソラーレに入ることが決まった段階で、大森先生ともう一人のトレーナーの鈴木先生にそれらをすべてフィードバックして、今後の体づくりのプランを立てたのを覚えています。それから今もずっとフィードバックとアップデートを繰り返しています。

身体的、精神的にも全ての要素がトータルで高い位置にないと戦えない競技だと考えています。

Third
吉田知那美
CHINAMI YOSHIDA

大森トレーナーは、まず講義をなさったそうですね。

(大森)サッカーのコンサドーレ札幌やスキージャンプの選手についていた経験から、説明を聞いて納得するとアスリートはもっと頑張れるという確信がありました。当時のチームのトレーニングは言ってしまえばレベルが低く、選手はお菓子ばかり食べているふつうの女の子たちでした(笑)。そこで、カーリングに必要な身体能力とそのためのトレーニングを理解してもらうのと同時に、モチベーションを上げる工夫をしたり、栄養などアスリートとして気をつけるべきことについて話をして、少しずつ選手の意識を変えていったんです。

 チームのサポートをするようになって苦労されたことはありますか。

(大森)競技の特性を理解することです。他の種目だと、これが一番の肝というものがあるんですね。例えばスキージャンプだと、飛び出す瞬間のパワーとか。でもカーリングは違う。身体的な部分では、筋力、パワー、柔軟性、あるいは風邪をひかないこと、体温調整ができること。精神的な部分では、モチベーションが高く戦略的であること、プレッシャーに打ち勝つこと。これらの要素がトータルで高い位置にないと戦えない競技だと考えています。

選手の皆さんもそれを自覚されていますか。

(吉田(知))いつも感じていています。わたしたちはコーチから、カーリングのトップ選手であることの第一の条件は真っ直ぐ滑ることだと言われていますが、それは何が欠けていてもできません。筋力がなくても、柔軟性がなくても、可動域が狭くても、体幹がなくても、集中力がなくても駄目。遠征で飛行機を降りた後でも、大会で連戦が続いた後でも、あるいは、トレーニングに打ち込んでいる筋肉の疲労時でも、どんな時でも安定したパフォーマンスをするのは正直難しいけれど、それを目標にしています。

遠征に帯同する時は必ずラジオ波を持っていきます。

アドヴィックス常呂カーリングホール

Lead
吉田夕梨花
YURIKA YOSHIDA

見た目以上に激しい競技ですが、疲労を取るためにしていることはありますか。

(大森)3時間に及ぶ試合を戦った後は、まずクールダウンをしっかりとしてもらっています。それぞれの疲労に応じて、ストレッチだったりジョグだったり。あとは栄養と休養を充分にとること、ケアをしっかりすること。
(吉田(夕))世界戦はだいたい1日2試合なのですが、オリンピックは1日1試合のこともあります。体が疲れていないとよく眠れないので、そういう時は多めに体を動かすようにしています。あとはもう一人のトレーナーの鈴木先生にヘッドマッサージをお願いすることもあります。体よりも頭が疲れてしまうときに「自分へのご褒美」じゃないですけど、リラックスタイムを作るようにしているんです。
(藤澤)わたしは試合中アイスに立ってることが多くて一見楽そうに思われるのですが、実際のところは脚がひどく凝るんです。そのため、ジョグとかストレッチ、入浴などでほぐしてあげる時間を大切にしています。ただ、海外だと自分の部屋にバスタブがないこともあるので、そういう時はオイルを持っていってマッサージをしています。
(鈴木)わたしもお風呂の時間を大切にしています。あと、もともと ものすごく体が硬いのですが、疲労で余計に体がこわばってくると調子が悪くなるので、ポールなどを使って入念にストレッチをするようにしています。
(吉田(知))必ず食事をしてから睡眠をとるようにしています。パフォーマンスに一番影響する頭の疲れは寝ることでしか取れないので、遠征先にはふだん使っている寝具を持って行って、できるだけ自宅と同じ環境を作るようにしています。お風呂があるのは全員にとって大切なことなので、最低でもどこかの部屋に一つはあるようにお願いしています。
(大森)止むを得ずお風呂がないところに泊まる時は、ラジオ波を使って体を温めることもあります。深部から温度を上げてくれるラジオ波は、こういう非常時にとても使い勝手がいいんです。

PHYSIT CONDITIONING(北海道北見市)理学療法士、柔道整復師、アスレティックトレーナーが在籍。整骨院を併設した道東初の本格メディカルフィットネスクラブ。スポーツ医学に基づきプロトレーナーが、一人ひとりにあったトレーニングをサポートする。

ラジオ波は普段どのように活用されていますか。

(大森)フィジットでは選手のケア、疲労回復など幅広く使っていますし、ジムの一般の会員で腰痛をお持ちの方に使うこともあります。遠征にトレーナーが帯同する時にも必ず持って行って毎日のケアの一要素としても取り入れています。あててすぐに温度がぐんと上がってくる感じがあるので、寒がりの藤澤選手や吉田(夕)選手は自分からラジオ波をかけたいと言うことが多いですね。
(藤澤)わたしのポジションは常に寒くて、体が冷えすぎるとショットに影響してマイナスになるし、ケガにも繋がりやすいので体温調整には特に注意しています。とにかく冷え性なので、先生にやってもらったり自分でやったり、たぶん他の人より多めにラジオ波を使っています。
(吉田(夕))カーリング専用施設は寒いのですが、オリンピックや国際大会のようにアリーナで試合をする時は汗だくになります。とはいえ室温1 度の氷上ですので、相手チームを待っている間には体が冷えていきます。平昌オリンピックの時は、寒さで緊張した体がリラックスするように、鈴木選手がラジオ波を毎日グイグイと強めにあててくれました(笑)。

トレーナーと選手は、互いに学びながら高め合える存在。

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藤澤五月
SATSUKI FUJISAWA

皆さんにとっての大森トレーナーとフィジットコンディショニングはどんな存在でしょうか。

(藤澤)体づくりのプロである先生と、カーリング競技をよくわかっているわたしたちは、互いに学びながら妥協せずに話し合って高め合える存在です。先生とのトレーニングでついた質の良い筋肉を、例えばラジオ波で温めて硬さを取ってうまく使える状態にしてあげれば、ケガをしないということにも最近改めて気づかされています。フィジットに行けば先生がいて、違和感があったら相談できる今の環境は本当にありがたいです。

(吉田(知))「カーリングは老若男女、体の大きさに関係なく戦える」とはよく言われますが、競技をするのと勝つことは別です。カーリングにはメジャースポーツのようなトレーニングのノウハウや教本がまだないので、私たちは日々、先生と一緒に勝てる体の作り方や使い方を研究をしています。これまでは、日本人の体の小さな選手が世界一を狙うことを驚かれたり、無理だと言われてきましたが、この先それを当たり前にしていくためにフィジットがサポートしてくれていると思っています。

小柄な日本選手が世界一を狙うことを驚かれた。この先、それを当たり前にしていくために。

(鈴木)トレーニング、ケアの大切さは先生に教えてもらいました。それ以外の部分でも、例えば試合に集中できるようなひとことを投げかけてくれたり、おもしろいことを言って緊張を紛らせてくれたり、遠征に帯同してくれる時にはシェフになってお肉を焼いて食べさせてくれたり、さりげないことをたくさんやってわたしたちに寄り添ってくれて、すごく頼りになる、まるでドラえもんみたいな存在だなぁと思っています。

(吉田(夕))フィジットはパートナーです。わたしたちのこの体、チームの成績、パフォーマンスを見てもらえれば、先生たちがどれだけ努力してこられたかが見える。まさに先生たちの評価がかかっている大事な体であり、ここまで世界で戦えるように作ってくれたことに感謝しています。でも、ここで満足したら終わってしまうので、これからも一緒に上を目指していきたいです。

大森トレーナーからも今後の夢や意気込みをお聞かせください。

(大森)夢はただ一つ。ロコ・ソラーレが冬季オリンピックで金メダルを獲ることです。本当に一日のうちでもロコ・ソラーレのことを考えていることが凄く多いんです。フィジットのトレーナー、スタッフ、みんなでチームを支えて一緒に世界一を獲るという気持ちで今後の4年間を過ごしていきたいと思っています。

カーリングチーム

ロコ・ソラーレ + PHYSIT CONDITIONING

(ろこそらーれ)

※写真右より

藤澤五月(ふじさわ さつき)1991年5月24日生まれ。北海道北見市出身。ポジションはスキップ。身長156cm。

鈴木夕湖(すずき ゆうみ)1991年12月2日生まれ。北海道北見市出身。ポジションはセカンド。身長145cm。

吉田夕梨花(よしだ ゆりか)1993 年7月7日生まれ。北海道北見市出身。ポジションはリード。身長152cm。

吉田知那美(よしだ ちなみ)1991年7月26日生まれ。北海道北見市出身。ポジションはサード。身長157cm。

大森達也(おおもり たつや)1973 年10月3日生まれ。北海道出身。PHYSIT CONDITIONING 代表。ロコ・ソラーレ北見チーフトレーナー。札幌の整形外科病院でトップアスリートの治療・トレーニングに従事。地元北見に戻り、2017年にPHYSIT CONDITIONINGを立ち上げる。北海道理学療法士会道東支部長として地域医療にも携わっている。
認定理学療法士(運動器)/柔道整復師/ NSCA-CPT /健康運動実践指導者/日本体育協会フィットネストレーナー/ NESTAゴルフコンディショニングスペシャリスト/ FMS level1 / VIPRインストラクター/日本コアコンディショニングBIR /貯筋運動指導者/日本オリンピック委員会 強化スタッフ/日本メディカルフィットネス研究会 理事/北海道医療大学 非常勤講師/(公社)北海道理学療法士会道東支部 支部長/北海道理学療法士連盟 道東地区 地区長/北見摂食嚥下ケア研究会 役員 ※2018 年11 月現在


【ロコ・ソラーレ】
2010 年8月結成。チーム名の「ロコ・ソラーレ」は、「ローカル」とホームタウンである北海道北見市常呂町の「常呂っ子」から「ロコ」 + イタリア語で太陽を意味する「ソラーレ」に由来する。地元常呂から太陽のように輝きを持ったチームになるよう、「太陽の常呂っ子」という意味を込めて名付けられた。

【近年の主な戦績】
日本カーリング選手権 優勝(2016 年)/世界選手権 準優勝(2016 年)/日本カーリング選手権大会準優勝(2017年)/平昌オリンピック 銅メダル獲得(2018 年)※2018 年11月現在

ロコ・ソラーレ + PHYSIT CONDITIONING 使用製品