いつでも正確に関節可動域を評価することができる角度計の開発

角度計REVOの開発に至った経緯についてお聞かせください。

関節可動域の測定には、基本軸と移動軸を合わせて尚且つ角度の目盛りを読むという三つの条件を満たす非常に高いスキルが求められます。そのため、当時指導にあたっていた学生たちに関節可動域を測定させてみると、学生の多くが軸をうまく合わせることができず苦戦していました。

従来の関節角度計、特にプラスチック角度計のようなアームの短い関節角度計では、肩関節の屈曲や外転などの軸の長い関節における可動域を測定する場合正確に軸をとらえることが難しい場面が出てきます。そこで、もっと正確に測定できる関節角度計を開発できないかと思い立ち、商品アイデアを酒井医療さんへ提案させていただきました。

臨床において、経験年数の差によって関節可動域の測定に差が生じることは様々な論文でも指摘されています。しかし本来、評価結果に差が出るということあってはならないことです。その患者さんにとってより適切な治療を提供するためには、関節可動域ひとつとっても、検査者に関係なく常に正確に測定することが重要となります。

結局のところ、関節可動域を測定するうえで最も重要なことは、軸をとる際の信頼性、精度を上げることです。一般的に、関節角度計のアームが短ければ短いほど大きい関節の測定は困難になります。
一方で、そうした課題を解決するために東大型や神中式といったアームの長い関節角度計を用いますがプラスチック角度計に比べサイズも大きいことなどから持ち運びには不便さを感じてしまいます。

そのため現場では、持ち運びやすいプラスチック角度計などを用いて肩関節のような大きな関節の可動域を測定するといった場面も多々見られます。慣れて経験を積めばアームの短い関節角度計で大きな関節の可動域を正確に測定するといったこともできるようになります
しかし
経験年数の浅い若手のセラピストや学生では難しい場面も多いと思われます。そこで、セラピストの技量に関係なく、いつでも正確に関節可動域を評価することができる関節角度計の開発が必要だと考えました。

角度計REVOの最も大きな特徴は回転角度盤です。測定の際には、この中にある鋼球が重力の影響により鉛直を示します。
つまり鋼球が指標となって垂線がわかる仕組みとなっています。例えば肩関節屈曲の基本軸は、「肩峰を通る床への垂直線」です。それをあわせることで鋼球は常に基本軸を表してくれるので、基本軸をあわせる必要がなくなり、移動軸と回転角度盤が示す角度を読むだけで正確な肩関節屈曲角度が測定できます。

新型携帯用プラスチック角度計の開発と測定精度の検討

【動画で解説】角度計Revoによる測定方法

角度計REVOの汎用性について

先ほども述べましたように、REVOの最も大きな特徴は回転角度盤です。鋼球により垂線(鉛直)がわかることから、関節可動域の測定以外にも汎用性があると思います。

例えば、嚥下障害の評価のために行う嚥下造影検査VF)の際の座面の角度であったり、日常においてはベッドのギャッジアップ角度であったりといったことも測定できますので、セラピスト以外にもニーズがあるのではないでしょうか。

REVOを用いることで、これまでの経験則依存であった測定方法と比較して、5度単位ではありますが、より正確に関節可動域を定量化することができると考えています。

 

さいごに

REVOの原理をうまく応用すれば、例えば、測定肢位を座位ではなく臥位にすることで、肩関節の内外旋や頸部の回旋といったようなものも、より高い精度で測定できるようになると思います。原則は原則として存在していますが、臨床において、必ずしも原則に則って評価をしなければならないかというとそうではありません。

その時の患者さんの状況に応じて評価の方法を変えていく、もちろんそういった場合にはどういった姿勢で測定したのかしっかり記録として残しておく必要はありますが、そうした多様性があってもいいのではないかと思います。

REVOアナログな機器ですので、今の時代からは逆行しているのかもしれません。しかしアナログの良さというのも絶対にあると思います。臨床現場でプラスチック角度計が使われていないというのであればニーズはないと思いますが、アナログの関節角度計はまだまだ現場で使われています。

関節可動域測定はほぼ100%といっても過言ではないくらい行われる評価ですので、プラスチック角度計の需要は今後もあると言えますし、従来のプラスチック角度計よりも、より正確に関節可動域測定が可能となるREVOのニーズも同じくあると考えています。

関節可動域測定における原理原則はしっかりおさえつつ、このREVOを活用していただければと思います。

【 お話を伺った方 】
REVO開発者  永﨑 孝之 先生

学校法人巨樹の会 令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 学科長・教授

所属学会:日本理学療法士協会/日本支援工学理学療法学会/日本理学療法教育学会/福岡県理学療法士会/日本リハビリテーション工学協会/理学療法科学学会

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1つで2役。中関節、大関節用の角度計。

角度計RevoSPR-628