お役立ち情報

4章 5.アイソメトリックとアイソトニックの利点と弱点

アイソメトリックとアイソトニックの定義、利点と弱点などを紹介します。

1.等尺性収縮(Isometric Contraction、アイソメトリック収縮)

例として、一定の姿勢で動かない物を持ち上げようとする時のような場合の上肢(下の図では上腕二頭筋群)の筋の収縮や運動のことです。下の図のように固定されたバーを持ち上げようとする状態では、強く上げようとするほど上肢に抵抗がかかります(反力ともいいます)。この抵抗(反力)が筋への「負荷」になります。

力を緩めれば上肢にかかる抵抗もその分低下します。軽く握っているだけでは殆ど抵抗もありません。手で上げようとする力が抵抗(反力)そのものですので、上げる力と抵抗は釣り合った状態です。

これを関節運動で表現すると、「関節を動かさずに筋を収縮させること」となります。

筋は収縮しても(関節が動かないので)筋群の全長は変わりません。(これを「等尺」と表現しています」

※厳密には筋・腱複合体として見ると、腱長は伸張し、筋長は短縮しているといわれています。

異なる言い方で整理すると以下のようになります。

速度(動き) : 0     ・・・・・(関節の動きがないので速度“0”)

抵抗(負荷) : 可変    ・・・・・(押す力=抵抗は一定せず“可変”)

◇ トレーニング効果から見た利点(等張性と比較して)

* 筋に最大負荷を与えることができます。

筋の負荷は押す力の反力(抵抗)ですので、最大の力で押せばその時筋には最大の抵抗がかかります。最大負荷を与えることができる「アイソメトリック」は筋力増強には非常に効果的といわれています。

* 簡単に何処でも、器具がなくてもトレーニンができます。

* 本人の出力できる以上の負荷はかからないので過負荷がかかることはなく、安全なトレーニングができます。

◇ トレーニング効果から見た弱点(等張性と比較して)

* 関節の動きがありません。

* トレーニングを行う関節角度を変えながら複数の位置でトレーニングを行う必要があります。

* 筋ポンプ作用が働きにくいため血流が阻害されるおそれがあるといわれています。

筋力は関節を動かすためのもので、その意味では効果的ではないといわれています。「アイソメトリック」

は、最大抵抗(最大負荷)をかけられる点では効果的ですが、関節の動きがない事が最大の弱点となります。

2.等張性収縮(Isotonic Contraction、アイソトニック収縮)

例えば、立位にて上腕を下垂位にし、手でダンベルを持って上げ(肘を屈曲)、下げ(肘を伸展)する時の上腕二頭筋などの屈筋群の収縮や運動のことです。筋の「抵抗(負荷)」はダンベルの「質量」ですから一定です。負荷が一定と言うことは筋の張力は一定です。(これを「等張」と表現しています)

動きとしては、肘の曲げ伸ばしは自由にできるので、速度は自由(可変、一定しない)ということになります。

速度(動き) : 可変    ・・・・・(動かす速さは一定せず“可変”)

抵抗(負荷) : 一定    ・・・・・(ダンベルの重さのため“一定”)

以上は“運動速度”と“筋への抵抗(負荷)値”の関係から説明したものです。

これを、“運動方向(屈曲・伸展)”と“筋群の全体の長さ”で表現すると、

1.肘関節の屈曲では、筋が収縮しながら屈筋群の全長が短くなり、これは「短縮性(求心性)収縮」(コンセントリック:Concentric Contraction)と呼ばれます。

 

2.肘関節の伸展では、筋が収縮しながら屈筋群の全長が長くなり、これは「伸張性(遠心性)収縮」(エキセントリック:Eccentric Contraction)と呼ばれます。

以上は、解りやすく“手でダンベルを持って上げ下げする”例で紹介しましたが、アイソトニックの状態は意識しなくても重力下の日常でもよく起きる運動(筋収縮)の様式です。

一例として

* 椅子から立ち上がったり、座ったりする場合

立ち上がる動作中の大腿四頭筋群は短縮性収縮、座る動作中の大腿四頭筋群は伸張性収縮

* 立位で、踵を上げたり(爪先立ち)、踵を下ろしたりする場合

踵を上げる動作中の下腿三頭筋群が短縮性収縮、踵を下ろす動作中の下腿三頭筋群が伸張性収縮

体重による一定の負荷があるため、身体を動かす時の四肢の筋群の多くは等張性(アイソトニック)の短縮性(コンセントリック)収縮と伸張性(エキセントリック)収縮を繰返しているとも言えます。

◇ トレーニング効果から見た利点(等尺性と比較して)

* 動的なトレーニングができます。

* 速い速度、遅い速度でのトレーニングが(自由に)できます。

* 短縮性、伸張性の(両方の)トレーニングができます。

* 負荷としては負荷となる物がなくても体重や四肢の自重を利用したトレーニングができます。

* 筋のポンプ作用などによって血流の阻害が少ないといわれています。

◇ トレーニング効果から見た弱点(等尺性と比較して)

* 動作範囲全域で挙上できる負荷を設定するために最大負荷でのトレーニングが不可能です。

* 速度を上げると「慣性」の影響から負荷値が変動しやすくなります。

* 関節角度が変化すると重錘の受ける重力方向と抵抗のかかる方向がずれる場合は負荷値が変動します)

* 大きな負荷で安全にトレーニングするには設備(ウェイトスタックマシーンなど)が必要になります。

* 伸張性トレーニングは、短縮性トレーニングに比べ大きなトルクを発揮できる特徴がありますが、過負荷となる場合には安全性が低下する危険性があります。

 

※アイソキネティック(等速性)収縮の詳細については次回紹介します。

関連製品

多用途筋機能評価運動装置

バイオデックス システム 4BDX-4

バイオデックス システム 4

豊富なデータをもとに、多様な評価機能と快適な操作性を両立。

豊富な研究・臨床データをもとに開発。

世界中の幅広い対象者に利用されているので豊富なデータをもとに順次レベルアップ。より被験者に合ったやり方で多くの部位の評価ができます。

高性能ダイナモメータを採用。

最大角速度500deg/sec、最大トルク680Nmのワイドレンジを実現。フルスケールでの誤差が、トルク・速度で±1%以内、角度は1°以下です。

日本語で操作でき、抜群の操作性。

OSは「Windows 7(日本語版)」を採用。アプリケーションは完全日本語化されていて、扱いやすい操作環境です。

多様な情報をさまざまに解析可能。

トルク・関節角度・速度などの情報をリアルタイム表示し、時間軸による波形データ解析ができます。
得られた情報をもとにパワーや加速能力など多くのパラメータをデータ処理できるので研究に便利です。
外部機器へのアナログ出力(トルク、角度、角速度)機能を標準搭載。

タッチ入力機能により操作性が進化。

モニター画面に触れるだけのタッチ入力による操作を可能にしました。
操作をアシストする「ウィザードガイド」や「日本語ナレーション動画ヘルプ」も標準装備しました。
ポジショニングの設定、手順などを含むマニュアルDVDを標準装備しました。