お役立ち情報

1章 2. バイオデックスでわかること

バイオデックスシステム4は長年の蓄積された基礎研究や臨床研究などを基にしたさまざまなパラメータによるデータ解析項目や処理方法を採用しており、多様な筋機能に関するデータが得られます。

主な計測データ

・運動速度と筋出力の関係性

・関節角度と筋出力の関係性

・運動モード種別と筋出力の関係性

・筋収縮種別と筋出力の関係性

・カラーマッピング評価(運動速度―関節角度―筋出力の分布評価:オプション)

 

どのような計測データを得られるか

◆ 関節角度(位置情報)が計測できる

◆ 最大筋力が計測できる

◆ 最大筋力の発揮角度が計測できる

◆ 各関節角度でのトルクが計測できる

◆ 仕事量が計測できる

◆ トルクの発揮傾向が解析できる

◆ 瞬発力・パワーが計測できる

◆ 筋持久力・疲労度が計測できる

計測データから何が評価可能か

術前術後の比較ができる

患側と健側の比較ができる

速度別の筋出力評価ができる

損傷程度(低下率)が推測できる

回復度が評価できる

トレーニングの効果が評価できる

痛みと筋力変化の関係が推測できる

痙性による筋力への影響が推測できる

最大努力か否かの評価ができる

位置覚評価(角度再現性評価)ができる

など

主な解析データ項目

アイソキネティックマシンを用いて得られるデータには数値データ、各種グラフデータがあります。これらのデータを適切に解析することで、各関節の最大筋力、瞬発力、持久力、疲労、左右差、主働筋と拮抗筋の筋力比率、あるいはこれらの項目の経時変化(改善、弱化)などを具体的に把握することが可能になります。

ここではバイオデックスシステム4の「総合評価レポート」を例に計測データの各解析項目について概要を説明します。

(1). 最大トルク(NM)

テストセット内の最大の筋力をトルクとして表したものです。ピークトルクとも表記されます。関節部位はもとより、絶対的なトルク値となるため筋量や体格にも影響されます。

また計測時の速度条件や筋収縮形態などによって大きく変動します。バイオデックスの最も代表的なデータといえます。

ハンドヘルドダイナモメーターなどと異なり、バイオデックスでは関節が発揮するモーメントをアタッチメント経由で「回転力」として回転軸のトルクセンサーが検出しますので、安定した計測データが得られます。

従来の研究で、人体の筋出力は動作速度との相関があり、一般に動作速度が速くなればなるほど発揮できる最大筋力は小さくなる(求心性の場合)ということが明らかになっています。イギリスの A.V. Hill(1938) が力(負荷)-速度曲線というグラフを発表しており、遅い速度の時により大きな筋力が発揮され、速い速度になればなるほど筋力は小さいものになるといわれています。対象とする関節によって動作する角速度も異なりますから、すべての関節において等しく適用される角速度はありませんが、一例として膝関節の場合60度/秒(1秒間に角度にして60度回転する速度、角速度)という速度が一般的な筋力測定に用いられる速度として採用されており、これを低速度とした場合、中速度、高速度という位置付けで180度/秒、300度/秒という速度が使われることが代表的になっています。

※60度/秒=10RPM(1分間の回転数)、最高速度=50RPMが初期のアイソキネティックマシンの設定であり、多く利用されてきたことから一般的な標準設定速度となっています。

これらの速度における一般的データも今までに蓄積されており、それと参照することで、アイソキネティック動作における自分の最大筋力が他者と比較することも可能です。

(2). 最大トルク/体重(%:NM/kg)

(1)のトルク値を体重で除したもので、体重1kgあたりの筋力としての評価値となります。

演算後の単位としてはNM/kg=トルク/質量が正確な表現ですが、一般的に理解し易い体重比率=%

を用いることがあります。男性と女性や大人と小児など体重の異なる被験者の筋力を相対的に比較する場合に絶対値である最大トルクではなく、この値を用いることが多くなっています。

膝関節を60度毎秒で測定した場合、一般に健康な成人男性の場合伸展側の最大トルク/体重は270~300(%)が健常人としてのレクリエーショナルスポーツレベル、同じく女性の場合は240~270(%)がそれに該当するといわれています。

(3). 最大トルク発生時間(秒、sec)

最大トルクを発揮した試行回数のトルクカーブでの動作開始から最大トルク発揮までの時間を解析します。これによりどの程度の瞬発能力を有しているかの評価が可能となります。10ミリ秒単位で評価可能です。

(4). 最大トルク発揮角度(度、deg)

(1)の最大トルクを発揮した関節角度の評価となります。動作中のトルクカーブの中でどの位置で最大能力を発揮したかの目安となります。膝関節座位での低速度(60度/秒)の評価では伸展時60度~70度、屈曲時20度~30度が平均的といわれています。

またトルクカーブの形状などの変化にもつながりトルクの立ち上がりの傾斜角度などで評価するトルク発揮時間割合:TRTD(TIME RATE OF TORQUE DEVELOPMENT )などの評価にも利用されます。)

(5). トルク@〇〇deg(NM)

評価したい関節角度を指定することで、その関節角度における発揮筋力を出力することができます。各種整形疾患で特定の関節位置における傷害、欠損がある場合、その関節位置を狙い撃ちしてデータを見ることができますから、被験者一人一人に沿った個別的な筋力評価をすることができます。レポートメニューで計測後に自由に選択可能です。

(6). トルク@〇〇sec(NM)

上記の(5)と同様にテスト動作開始後の特定時間での発揮筋力を見ることができます。一例として人間が歩行する時、踵着床(ヒールコンタクト)から0.2秒程度で体重を支える筋群が緊張する(筋力を発揮する)といわれています。(Kevin.E.Wilk)その意味で特定の関節角度における筋力を評価するのと同様に、臨床的な意味合いでの筋力評価をすることが可能です。レポートメニューで計測後に自由に選択可能です。

(7). VAR係数:COV(%)

データのばらつきを示す指標である「変動係数」(Coefficient of Variance)であり標準偏差を算術平均で除したものです。

一セットで3回、5回などの繰り返し動作を行った時、その各回のトルクがどの程度変動したかを見るもので、その測定時のデータのばらつき具合を見ることができます。アイソキネティック測定は、一定の手順に従って、被験者が内容を理解できていて、全力で動作(最大努力)すればデータのばらつきが少ない(非常にまとまったデータになる)、裏返せばデータの再現性が高いことが利点ですが、もし被験者が内容を理解できないでやっている、最大努力をしていない、あるいは何らかの傷害などがあって最大努力ができない、というような場合にはデータのまとまりが悪くなります。その場合にはデータ自体の信頼性も疑わしいものになります。この数値が20も30もある場合はデータのばらつきが大きいと考えられます。またその場合には、レポート出力する時に、一般評価とトルクvsポジションにチェックマークを入れることで各回ごとのトルクカーブをオーバーレイして見ることができますので、カーブの形状や高さがばらついていることが確認可能です。

※COVには単位はありませんが一般の方にも分かり易く表記するため%を使用しています。

(8). 最大仕事量(J)

トルクカーブの形で見た場合、山の一番高いところが最大トルクということになりますし、山の面積(積分値:角度とトルクからの)が仕事量ということになります。トルクカーブを評価する時には、山の高さが十分高いことも必要ですし、同時に山が十分な凸面のふくらみを持って十分な面積を持つことも必要です。逆に最大トルクは十分高くても仕事量が低い場合は発揮能力として低い可能性があります。

(9). 最大仕事量発揮回数(回)

一回の測定のうちで、上記(8)のトルクカーブの面積が最も大きかったのは何回目かを示したものです。レポート項目の(1)最大トルクもそうですが、アイソキネティック計測においては、1回で最大の力が発揮されるとは限りません。最大トルクについては大体3回ないし5回程度繰り返す中で最大トルクが発揮される可能性が高いといわれています。もし測定回を一回だけにした場合は、本当の最大トルクが出ない可能性もあります。それと同様に最大仕事量も一発勝負では発揮されない可能性があります。最大仕事量と最大トルクは一定の相関を持っています。また例えば高速度で10回、20回などの筋持久力測定をした場合に最大仕事量発揮回数が9回目であったり、10回目であったりするというデータの場合、前半での努力が欠けるデータであることから、データ自体の信頼性を疑う必要もあります。

(10). 仕事量/体重(%)

この項目は上記(8)の最大仕事量を体重で除したものです。最大トルクの絶対値で見るだけでは個人間の比較ができないのと同様に、仕事量も最大仕事量で見るだけでは個人間の比較ができません。体重・体格の差を考慮して客観的な比較をするためには、仕事量を体重で除す必要があります。

(11). 総仕事量(J)

一回の測定で行われた動作の全回分の仕事量を合計した数値です。5回、10回と伸展屈曲した時の、合計の仕事量を意味します。

(12). 仕事量初回1/3(J)

この項目と次の仕事量最終1/3の二つを用いて疲労(持久力)を評価することができます。一般に筋出力動作を続けていると、どんどん疲労が蓄積し、発揮される筋力も小さくなっていきます。動作の最初と最後でどれくらい筋力が低下するのか、これによってその人がどれくらい疲労しやすいのか、しにくいのかを判断することができます。この項目は、筋力測定した際の、全測定時間を3等分し、開始から最初の1/3の時間、真中の1/3時間、最後の1/3時間と分け、そのうちの最初の1/3の時間の間に行なわれた仕事量(トルクカーブの積分値)を数値としてあらわしたものです。例えば膝の伸展屈曲を5回実施した、伸展だけの合計で6.00秒かかったとすると、6.00秒を三等分し、最初の6/3秒(2.00秒)に行われた仕事量の合計がこの項目にあたります。注意すべきは、あくまでも切り分け方が時間軸に従っているので、何回のうちの何回分という具合にきれいに切り分けられるとは限らないということです。

(13). 仕事量最終1/3(J)

上の項目と関連して、最後の1/3時間の間に行なわれた仕事量を数値としてあらわしたものです。上記の例でいえば最後の6/3秒(2.00秒)に行われた仕事量の合計を意味します。

(14). 仕事量疲労(%)

上記仕事量最初1/3を分母とし、仕事量最初1/3と仕事量最終1/3の差を分子として、最初から見て最後の方がどの程度低下しているかを%で表わしたものです。もし初回1/3仕事量が100(J:ジュール)で、最終1/3仕事量が75Jだった場合、その差は25ということになり、100から75を引いた差25を100で割った25%が仕事量疲労ということになります。もし初回が100(ジュール)で最終も100だった場合、全く仕事量が落ちておらず、この場合疲労は0%(全く疲労していない)ということになります。もちろん現実問題として必ず疲労は起こりますから、疲労0%はありえないということになります。ですからこの項目を利用してどれくらい疲労しているかを判断できるのと同時に、もし疲労が0%だったり、逆に最後の方の仕事量が多く、マイナス%になったりしているような場合は被験者が真剣に測定をしなかったり、関節に痛みなどの阻害要因がありうまく動作できなかったり、測定の趣旨をよく理解できておらず、正しい繰り返し動作ができなかった(可動域が大きく変動するなど)という可能性があることを示唆しています。

参考までに、筋疲労という言葉は一緒でも、メーカーないし機種により評価方法はそれぞれで、統一されたものではありません。アイソキネティック計測をして疲労を見た、という場合どういう機種のどういう解析方法を用いているかを知ることもより深い理解のために重要です。

(15). 平均パワー(W)

(11)の項目『総仕事量』を所要時間で除したものです。運動効率を評価する項目です。同じ仕事量を発揮してもどれだけ時間がかかったかは人によって違いますし、同じ仕事をするならばより短い時間で完了している場合や、同じ時間で高い仕事量を達成する方が運動効率が良いと言えます。

(16). 加速時間(msec)

上記(3)の『最大トルク発生時間』は動作中で最大トルクがどれだけ早く得られたかという切り口で被験者の瞬発力(速度性能)を評価する項目ですが、この加速時間は被験者が動作を開始してからどのくらいの時間で設定速度(60度/秒、180度/秒など)に追いついたかを見ることで瞬発力を見る項目です。一般には停止状態から動作を開始してからまず設定速度に到達し、その後にトルクが発揮されることになります。また傷害の状況や疾患によっては設定速度に到達できずにテストを終了することもあり、動作の能力を測る目安にもなります。

(17). 減速時間(msec)

上記加速時間とは逆に動作終了時にアタッチメントが設定速度から減速を始め、伸展完了あるいは屈曲完了までの所要時間を表します。設定速度に追いつけないことで加速性能の欠損を評価できるのと同様に減速時間が不必要にかかることで速度制御能力を見ることもできます。

(18). ROM(度、deg)

システム4では、測定をする前に動作範囲(可動域)を決めますが、これはここまで伸展できる、ここまで屈曲できるという意味での可動域であり、これを設定していても実際にその可動域全域にわたって動作・筋力発揮できるわけではありません。測定前に設定した可動域に対し、実際の測定中の動作範囲(可動域)を示すのがこの項目です。いわばテスト中の機能的な可動域を示すものです。

(19). 主働筋/拮抗筋対比(%)

一例として膝関節を取り上げた場合、膝関節は伸展動作と屈曲動作がシリーズとして完結している動作です。あらゆる動作において伸展筋群と屈曲筋群は連動して機能しており、それぞれの筋群が発揮する筋力も妥当とされる比率が存在します。この比率が適切なものでない場合(伸展に比べて屈曲が弱すぎる、あるいは屈曲に比べて伸展が弱すぎるなど)、十分な筋活動、動作ができないだけでなく、傷害発症の危険性が増したり可能性があります。例えば膝の伸展屈曲筋群についていえば、60度毎秒という速度では伸展筋群の筋力を100とした場合、屈曲筋群の筋力は60%程度が一般的であるという知見もあります。なお動作速度が速くなるに従って伸展筋群に対する屈曲筋群の筋力比率は高くなるといわれていますので、速度条件を加味してこのデータを評価する必要があります。

(20). 欠損比(%)

以上述べた各項目について左右の筋力比較という見方があります。左右の筋力は全く等しいことが一般的には理想といえますが、実際的には左右の筋力が全く等しいということは中々ありません。ただこれにも一般的な指標があり、たとえば病院のリハビリテーショントレーニングにおいて、筋力の面からは受傷側(患側=injured)の最大筋力が非受傷側(=健側、uninjured)のそれに比べて80%程度まで回復した時点をもって筋力トレーニングのゴールとされることがあります。言い換えれば左右の最大筋力の差が20%以内であれば筋力の面からは健常者といえるわけです。ただしこれも速度条件を加味してこのデータを評価する必要があります。

経時的変化を評価するレポート

個別のデータ項目の紹介をしましたが、計測結果を蓄積することで経時的な推移をサマリーとしてレポートすることも重要です。

最大筋力も十分にあり、同時に体重に見合っただけの適正な体重比を示し、迅速に筋力を発揮するだけの瞬発力を有し、疲労は極力少なく、左右差もほとんどない、ということが一方で筋力の理想的なモデルとした場合、ある被験者がどこまでその理想に近いか、あるいはどの項目において劣っているかを見ることによってその人の筋機能を正しく(正確に、定量的に、安全に、再現性を持って)評価することが可能となります。

更にこれら数値データだけでなく、グラフとして得られるトルクカーブの形状(波形)を見ることで、臨床的な判断を下す補助になる可能性もあります。ある疾患の場合には一定のトルクカーブ形状を示すという例があり、トルクカーブの形状を見ることで臨床的な意味合いである疾患の存在を疑うことも可能になります。一例として、膝の前十字靭帯損傷(ACL疾患)の場合伸展側のトルクカーブが通常は一つしかないピーク(頂点)を二つ有する形状を示す(ツーピーク状)場合があります。

トルクカーブの形からある種の疾患の存在を疑い、その他の数値データの解析でより具体的な解析を行い、筋力測定だけでなく、その他の診断、評価を複合的に使用することによって総合的に正確な疾患を判断すること寄与する可能性があります。

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