お役立ち情報

6章 8.アイソキネティックマシンの臨床活用・研究への応用

アイソキネティックマシンが誕生してから半世紀を越え、膨大な研究に支えられて臨床現場や研究のフィールドでの筋力評価システムとして活用されています。その一部をご紹介します。

8-1 主な利用フィールド

・医療領域での活用
運動器疾患、中枢性疾患などによる筋機能の低下に関して、その評価を行い回復の効率的なリハビリテーションメニュー作成などのために数多く利用されています。特に下肢の膝関節周囲の傷害に関して数多く利用されていますが、それ以外の下肢、上肢、体幹なども含め、若年者から高齢者まで、その疾患や手術種別などさまざまな検討がなされ、その評価やメニューの検討にも幅広く活用されています。アイソキネティックマシンの有するさまざまな特性を活かし、多様な視点から検討された臨床研究や基礎的な研究などが実施されています。

・スポーツ科学・保健領域での活用
各種の競技スポーツ選手や高齢者の健康維持・増進のための運動などによる筋機能の評価や、その維持・増強のための効果的なトレーニングメニュー改良のためにも活用されています。また小児やジュニアの発育・発達の過程での筋機能とパフォーマンスとの関連も含めて研究されています。更にこれらの研究を基にしたスポーツ用品の研究・開発にも利用が拡大しています。

 

・人間工学領域での活用
人間工学の領域でも生体の機能評価の中の一つとして筋機能評価を行うことで、快適な操作性を有する機器開発や製品の改良にも応用されています。またロボット開発などにおいても精度の高いデータは人の基礎的な機能や能力の評価にも有用な情報となるでしょう。

8-2 活用事例

・各種運動モードによる筋力トレーニングと評価
最近は筋力評価を行うことが注目されていますが、筋力の維持や回復、増強のための運動負荷装置としての利用方法が挙げられます。ダンベルやバーベルなどの重錘をはじめラテックスチューブなどを使用する場合などの「遠心性(エキセントリック)筋収縮」を伴わない、「求心性(コンセントリック)筋収縮」モードであれば被験者が発揮した筋力以上には負荷がかからず、筋張力の発揮傾向(トルクカーブ形状)に適応した、無理・無駄の少ない負荷による安全な条件下によるトレーニング効果に関する臨床的な価値も認められています。もちろん遠心性筋収縮による負荷の場合にスタートトリガーレベルと上限トルクリミットなどの設定を行うことで、安全性を確保した条件下での負荷としての利用も可能です。

・機能的速度による筋力トレーニングと評価
最新のバイオデックスシステムでは最低速度0.25度/秒の極低速度から500度/秒までの高速度まで幅広い等速度設定を行う事が可能です。慣性の影響を受ける重錘では不可能な低速から高速までさまざまな角速度で訓練・評価が行えるため,より実際的かつ機能的な運動速度における筋出力特性の評価が可能です。これらの速度条件の違いによって、そのトレーニング効果が異なり、低速度でのみトレーニングした場合に低速度領域中心に効果は高くなり、高速度でトレーニングした場合に高速度領域中心に効果は集中するという「速度特異性」の研究もあります。これに関連してトレーニングを行った速度の周辺(広範囲ではなく)にも効果が表れる「オーバーフロー現象」も言及されています。またこれに関連して可動域の一部のみで運動を行う「ショートアーク(Short-Ark)」エクササイズなども提唱されました。さらに運動効率の一つである「パワー特性」についても、速度条件によって変化するため、適切な速度選択として考慮されることがあります。

・運動連鎖の違いによる筋力トレーニングと評価
アイソキネティックマシンによる単関節運動である「開放性運動連鎖(open kinetic chain:OKC)」と複合関節運動である「閉鎖性運動連鎖(closed kinetic chain: CKC)」の運動形態の差異についてもその報告がされています。

・関節位置覚の評価
筋力評価とは異なり、深部感覚の一つである関節運動時の「位置覚」の評価にも利用されており、目標角度と開始角度などを設定し、極低速度での運動を行い、記憶した目標角度の再現性を評価します。この目標探索時の動作は他動と自動の両方の方法があります。この評価の際には視覚や聴覚など他の感覚入力の影響を低減することが求められます。またこの評価によって術後の関節の動揺性(不安定性)や疼痛、疲労などとの関連性も検討されています。

8-3 今後のアイソキネティックマシンの可能性

アイソキネティックマシンが高い精度や信頼性、正確性の高さを有し、世界中の筋機能の評価とトレーニングに果たしてきた貢献は大きく、今後もその必要性は維持されていくものと考えます。膨大な臨床評価や研究実績などの一部からバイオデックス社としても近年ハムストリングの傷害評価用や中枢疾患患者用の新たなアクセサリーを開発・発売しています。医療におけるニューロリハビリテーションやスポーツ科学、健康科学、人間工学、ロボット工学などの幅広い領域の発展をもとにして、今後も更なる性能の向上を図りつつ、新しい領域に貢献できるシステム開発と改良を続けていきますのでご期待下さい。

関連製品

多用途筋機能評価運動装置

バイオデックス システム 4BDX-4

バイオデックス システム 4

豊富なデータをもとに、多様な評価機能と快適な操作性を両立。

豊富な研究・臨床データをもとに開発。

世界中の幅広い対象者に利用されているので豊富なデータをもとに順次レベルアップ。より被験者に合ったやり方で多くの部位の評価ができます。

高性能ダイナモメータを採用。

最大角速度500deg/sec、最大トルク680Nmのワイドレンジを実現。フルスケールでの誤差が、トルク・速度で±1%以内、角度は1°以下です。

日本語で操作でき、抜群の操作性。

OSは「Windows 7(日本語版)」を採用。アプリケーションは完全日本語化されていて、扱いやすい操作環境です。

多様な情報をさまざまに解析可能。

トルク・関節角度・速度などの情報をリアルタイム表示し、時間軸による波形データ解析ができます。
得られた情報をもとにパワーや加速能力など多くのパラメータをデータ処理できるので研究に便利です。
外部機器へのアナログ出力(トルク、角度、角速度)機能を標準搭載。

タッチ入力機能により操作性が進化。

モニター画面に触れるだけのタッチ入力による操作を可能にしました。
操作をアシストする「ウィザードガイド」や「日本語ナレーション動画ヘルプ」も標準装備しました。
ポジショニングの設定、手順などを含むマニュアルDVDを標準装備しました。