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関節可動域の種類と制限因子

(1)関節可動域の種類

関節可動域は、他動的関節可動域と自動的関節可動域の2つに大別されますが、一般に「関節可動域」というと他動的関節可動域のことを指しています。それでは、各々の違いや特徴について見ていきましょう。

 

〈他動的関節可動域〉

他動的関節可動域とは、関節を他動的に動かした場合の関節可動域のことです。検査者や機器などによる他動運動、すなわち外力によって動かされた場合の可動域であることから、主動作筋、共同筋含め自発的な筋収縮は生じません。また自動運動と異なり、自身の力で関節運動を制御するといったこともないため、他動的関節可動域はその患者の最大の関節可動域であると言うことができます。

他動的関節可動域は、患者の機能障害を見極めるうえで欠かすことのできない評価項目の一つです。したがって、例えば術前の状態や術後の回復レベルについて評価を行う際には他動的関節可動域がよく用いられています。

 

〈自動的関節可動域〉

自動的関節可動域とは、関節を自動的に動かした場合、つまりは内力(筋収縮)によって動かされた場合の関節可動域のことです。これは、患者が自身でコントロールすることができる関節可動域であることから、他動的関節可動域と比較して小さい値となることが多いです。一方で、患者自身の力で発揮することができる最大の関節可動域であると捉えることもできるため、実用的かつ現状の能力や障害像を把握するうえでの一つの指標となります。

また自動的関節可動域の場合、筋力に依存した値であるということを念頭に置く必要があります。というのも、関節可動域は測定時に重力下での運動を求められることが多いことから、上肢や下肢といった自身の身体質量に抗って運動を行う力が必要となるためです。そのため、筋力低下が著明であればあるほど自動的関節可動域と他動的関節可動域の差は大きくなります。

 

臨床では他動的関節可動域のみを測定するケースも多いですが、自動的関節可動域も測定する場合には、その差を比較し自動的関節可動域を他動的関節可動域に近づけていくことが重要となります。

(2)関節可動域の制限因子とend feel

他動的関節可動域を測定する際には、エンドフィール(end feel)と呼ばれる「他動運動における最終域感」を確認することが重要となります。このend feelは、「何が関節可動域を制限しているのか」によって異なりますので、end feelを確認することで関節可動域の制限因子を推定することができます。

ここでは、一般的によく用いられるend feel分類の一つであるCyriaxの分類について紹介していきます。

①骨性(bone-to-bone):骨同士の接触により生じる、運動が突然停止するような硬い抵抗感。正常な場合は無痛である。
例:正常な肘伸展、(異常な場合)変形性関節症 など

②軟部組織接触性(tissue approximation):筋などの軟部組織同士の接触により生じる、弾力のある抵抗感。
例:正常な肘屈曲、正常な膝屈曲 など

③軟部組織伸張性(tissue stretch):拮抗筋や靭帯、関節包などの軟部組織が伸張されることにより生じる、ゴムのような弾力感を伴う硬い抵抗感。
例:正常なSLR(下肢伸展挙上)、正常なMCP関節伸展 など

④筋スパズム性(muscle spasm):他動運動により惹起される、反射的な筋収縮によって突然運動が停止するような硬い抵抗感。正常では生じず、痛みを伴うことが多い。
例:強い疼痛を伴う関節運動により惹起される防御性収縮 など

⑤弾性制止性(springy block):最終域で跳ね返りを感じるバネのような抵抗感。正常では生じない。
例:半月板損傷 など

⑥無抵抗性(empty):身体構造的な運動最終域に到達する前に、無抵抗に運動が妨げられた状態。関節外の原因による疼痛や、それに伴う恐怖感によって生じる。