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6. 疼痛評価

(1)評価目的

a)疼痛の程度を客観化する.

b)経時的な変化による介入効果を判定する

(2)評価方法

a)一般には,問診・視診・触診検査・運動検査の手順で評価を行う.

b)痛みの持続や慢性痛の場合,痛みに関する心理テストを加えることは有用となる.

①問診

a)痛みの部位?

b)痛みの期間?

c)痛みの質?

d)痛みの程度?

②視診・触診

痛みの原発部位およびその周囲に対して,炎症の有無,皮膚温,触覚(感覚)の異常,経皮的に圧迫などにより,痛みの変化を判定する.

③痛みの強さの評価

a)Visual Analog Scale(VAS)

b)Numerical Rating Scale(NRS)

c)Short-Form McGill Pain Questionnaire(SF-MPQ)

d)Faces Pain Rating Scale(Face Scale)

何れの評価も,一長一短がある.

従来,a)での評価が中心であったが,臨床では対象者の理解が得やすいということもありb)による報告が一般的となりつつある.c)は15項目の質問から構成されているが,1-11は感覚的表現,12-15は感情的表現を表し,心因性疼痛での感情的表現に反応しやすく,器質性疼痛との鑑別の一助になるとされる.従来から神経性疼痛での痛みを反映し難いとされてきたが,近年神経障害性疼痛を反映する7項目を加えたSF-MPQ 2が開発されて推奨されている.d)は,小児が対象の場合に頻用される.

④痛みに関する心理的要因のテスト

a)Pain Catastrophizing Scale(PCS)

b)Tampa scale for kinesiophobia(TSK)

c)Hospital anxiety and depression scale(HADS)

d)疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)

おもに,a)は痛みの破局的思考の評価,b)は恐怖回避評価,c)は不安や抑うつの評価,d)は慢性痛を対象として,日常生活の支障度と痛みの強さは必ずしも一致しない場合もあるが,痛みによる日常生活の支障の有無や自己効力感を評価する.

痛みを慢性化や難治化させる要因は,痛みの悪循環モデルである「恐怖回避モデル(fear-avoidance model)」で説明され,このモデルでは,急性期におけるアプローチが慢性化の予防に重要とされている.破局的思考や痛みに対する恐怖が強い例では,不安を助長させずに成功体験による自信の回復と賞賛が重要となる.また,過剰回避からの抑うつや不活動が助長されている例では,継続が可能なプログラムによって活動性を徐々に向上させることが慢性痛への移行の軽減につながる.