表面筋電図の基礎 (2)筋電図の種類と役割
筋電図の種類と役割
筋電図は電極(センサー)を用いて捉えた活動電位を図として表現したもので、電極の種類により筋電図の種類と役割は異なります。 電極の種類は主に1)針電極、2)表面電極、3)ワイヤー電極の3種類(図1)があり、それぞれの電極の使用方法は下記の通りです。
1)針電極・・・細い針の先端に活動電位を導出する部分があり筋肉の中に刺入し使用します。
2)表面電極・・・容積伝導により伝わってくる活動電位を皮膚の上から導出します。筋腹に表面電極を貼付し使用します。
3)ワイヤー電極・・・髪の毛のような太さとやわらかさをもったワイヤー電極を注射針を用いて筋肉の中に刺入し、その後、注射針を取り去って使用します。
筋電図導出のための代表的な電極と筋線維の大きさを比較した図を示します(図2)。
一般的な針電極は同心型針電極と言われ、針の先端の約0.5mmの中にある筋線維から発生する活動電位を捉えることが可能で、単一筋線維型針電極は図に示すように電極部分が極めて小さく、単一筋線維から発生する活動電位を分離することが可能となります。それに対し表面電極は直径約5から10mmと大きく、ほぼ2つの電極間相当の筋線維から発生する活動電位を扱います。すなわち電極の種類は、導出する活動電位(筋線維)の範囲が異なることから、針電極は局所的な複合活動電位を評価し、表面電極はほぼ筋線維全体の活動を評価することが可能です。ワイヤー電極は、表面電極で計測不可能な深部筋の計測を行います(図3)。
筋電図の種類と目的をフローチャートにまとめました(図4)。
針筋電図は、神経損傷や筋病変を診断するために局所の筋電図を導出します。そのため針電極を移動させ、筋内のさまざまな部位より異常所見が得られるかを評価します。
一方、表面電極は活動電位の誘発に電気刺激を用いる誘発筋電図にも用いられますが、リハビリテーション領域では筋線維全体の活動評価ができることから動作解析にもよく使用されています。また、筋電図を用いて筋活動をコントロールするバイオフィードバック治療も行われます。
筋電図の解析は、単一の運動単位を評価するもの(たとえば発火頻度や筋線維密度、運動単位領域の大きさなど)と、複数の運動単位が発生する活動電位の状態から動員や干渉波形、筋活動の時間的要素、筋疲労の度合いなどを知ることができます(図5)。
筋電図はさまざまな条件により影響を受けます。代表的な項目をあげると、機器・電極の問題,神経系の活動状態,筋線維の数やタイプ,そして皮下組織(脂肪)などがあり、このような筋電図に影響を与える因子をよく理解して計測や解釈を行うことが大切となります(図6)