表面筋電図の基礎 (3)筋電図から得られる情報
筋電図から得られる情報
筋電図は、筋線維から発生した個々の活動電位が容積伝導により電極に到達した時点の活動電位を加算(複合活動電位)し、図として表現したものです。 したがって、筋電図は筋力と同等ではなく、筋が収縮し筋力を発揮しているときに筋活動電位がどの程度、そしてどのように発生したか、すなわち運動単位の参加度合いを表現していることとなります(図1)。
それでは筋力と表面筋電図の関係を見てみましょう。
(図2)は徐々に筋力を増加させた場合の筋電図で、筋力の増加とともに筋電図も大きくなっています。
縦軸を振幅と呼び、横軸であらわされている単位時間あたりの筋電図(図中の赤枠)は、筋力の増加とともに密となります。
縦軸と横軸にあらわされた筋電図の増加はなぜ起こるのでしょうか。
発揮する筋力が弱い場合、収縮する筋線維の数は少なくて済みますが、強い筋力が必要な場合、収縮する筋線維の数も増加しなければなりません。 すなわち弱い筋収縮の場合、必要な運動単位数も少なくて済み、強い筋収縮の場合は参加する運動単位の数を増加させなければいけません。
これを運動単位の動員と呼び、各々の運動単位はインパルス(筋に対する指令)の発火頻度を増加させています。
これらの調節機構により活動電位の数や発火頻度も増加するため筋電図の増加として表現されることとなります(図3)。
いわゆる筋力は、運動単位の参加と筋横断面積、関節角度、運動速度などにより変化します。筋電図は運動単位の機能を評価しているため筋のコンディションにより、同じ筋力が発揮されているとしても変化します(図4)。
筋電図評価の特徴は、握力や筋力測定器(バイオデックスなど)による筋力評価と異なり、可能な限り個々の筋機能を評価することが可能となります。また、量的のみではなく時間的因子も考慮して評価することができます。
たとえば(図5)に示すような筋活動開始時間や筋活動のピークまでの到達時間、時間経過に伴う振幅の変化も計測することが可能です。
さらに複数の筋による活動関係も筋電図の得意とする評価です。筋力の増減に伴い筋電図は横軸(時間軸)も変化すると述べました。この横軸の変化は周波数によっても評価することができます。筋電図はさまざまな周波数を持つ波の複合波形のため、周波数解析により、どの周波数の波が存在するか判定することが可能です(図6)。
周波数解析により筋疲労や筋線維タイプの変化、老化などを評価できることがメリットとなります。これらの各種解析については次回掲載の「表面筋電図の計測と解析」で詳しくお話しします。