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表面筋電図の計測と解析 (2)筋電図の解析

筋電図の解析

筋電図は、縦軸に複合活動電位の振幅、横軸にその時間的推移を表現した波として表されます。この筋電図の解析項目を分類すると、1)量的因子の解析、2)時間的因子の解析、3)周波数(干渉波)因子の解析の3分類となります。

量的因子の解析は、ある力を発揮している時にどの程度に運動単位が参加しているかを表し、時間的因子の解析は、力の経時的変化に対しどのように運動単位が調節されたかを示しています。また、周波数因子については周波数、ゼロクロスレートやターンなどを用いて筋電図波形の干渉度(単位時間あたりの密度)を解析することとなります(図1)。

力(Force)を徐々に増加させた場合、まずサイズの小さな運動単位が発火し、力の発揮に応じて大きな運動単位が参加するとともに、1つの運動単位は発火(発射)頻度を増加させていきます。すなわち運動単位の動員と発火頻度の増加により力を調節しています(図2)。

力を徐々に増加させ、次いで徐々に力を減少させた場合、力の増加に伴い筋電図の振幅は徐々に増大し、力の減少に伴い筋電図の振幅は徐々に減少していきます。また、周波数も増加と減少の関係を同じくします(図3)。

力の増加に伴い、筋電図振幅も増加する関係は正しいと言えますが、筋の状態によって変化することがあります。力は関節角度や速度などが同じであれば、運動単位の参加様式と筋線維の太さ(筋横断面積)により決定されます。図4に示された筋萎縮を伴う筋と正常状態の筋で筋電図を比較してみましょう。両者とも同じ力を発揮していると仮定すると、筋萎縮を伴っている場合、筋電図振幅は大きくなります。これは萎縮した筋線維は筋張力が低下するため、力を釣り合わせるためには数多くの筋線維が参加(active)しなくてはなりません。このため参加する運動単位の動員と発火頻度の増加を必要とし筋電図振幅は大きくなります。このように筋電図は力そのものを表しているのではなく、運動単位の参加様式を表現したものであるため、筋の状態(萎縮や肥大)により変化することを知っておく必要があります。

時間的因子の解析は、振幅の時間的変化を捉えることにあります。運動中、刻々と変化する運動単位参加の経過を評価できることは筋電図のアドバンテージでもあります。筋活動の開始や終了点、筋活動の参加パターン(急・緩徐)などさまざまな解析ポイントがあります。関節角度や運動速度など身体運動状態を表す指標を同期し、さらに単独筋のみならず複数の筋を解析、そして考察してみると興味深い結果が得られます(図5)。

通常の筋電図は、横軸が時間経過で示されますが、周波数解析では横軸を周波数に変換します。一般的には高速フーリエ変換(FFT)を利用することにより、計測した筋電図に含まれる周波数がわかります(パワースペクトラム)。筋電図はさまざまな周波数を持つ波の複合波形であり、FFTにより分解されます。その代表値は、中間周波数(MF)、平均周波数(MPF)として表され、筋疲労や筋線維タイプの変化を見極めることなどに利用されます。図6は、筋収縮状態の異なるAとBの筋電図を周波数解析したサンプルを示しています。FFT処理後の中間周波数は、A=41.8Hz、B=86.9Hzを示しており、Bの方に高周波成分が多いことを認めます。

今回、筋電図の解析を、量・時間・周波数因子の3つについて述べました。次回より、それぞれの解析要素について詳しく述べていくことにします。