表面筋電図の計測と解析 (4)筋電図による時間因子の解析
(4)筋電図による時間因子の解析
一般に筋電図は、縦軸が振幅、横軸が時間で表現されます。量的因子の解析は振幅の大小を取り扱うことでしたが、時間因子の解析は、振幅を時間により解析します。この時間因子の解析の中で最も良く用いられているのは、筋活動の開始時間ではないでしょうか。文献的には、足関節捻挫や靭帯損傷における足関節の内反運動開始と腓骨筋の活動開始時間(図1)、変形性股関節症患者の踵接地と中殿筋活動開始時間の検討をして筋活動の反応性を見たものがあります。
いつからを筋活動の開始または終了とするかは、以下の方法が用いられます。
ベースライン(可能な限り筋活動がない安静時)をある時間計測する。
そして、
1. ベースライン(安静時の基線の振幅)の最大値を超えたところを筋活動開始(終了)時間とする。
2. ベースラインの平均振幅±2SD、もしくは3SDを越えたところを筋活動開始(終了)時間とする。
この方法で最も良く用いられる解析方法は2つめです(図2)。
図3に反応時間解析の一例を示します。ビープ音をトリガーとして、音が聞こえたら素早く運動を起こす指示をします。ビープ音の時間から筋活動が起こるまでの時間に遅延が認められます(前運動時間)。この遅延は0.57msecです。さらにビープ音から筋力計によるトルクが発生するまでの遅延時間は0.62msecです。筋活動開始からトルク発生までの遅延(電気力学的遅延、electromechanical delay=EMD)は、0.05msecとなります。
その他の時間因子の解析はあまり用いられることがありません。たとえば、振幅ピークや任意の振幅までの時間を求めたりすることで時間因子の解析が可能となります(図4)。