3章 4.筋の収縮様式とトレーニング
筋収縮の分類
運動療法を実施する際や筋機能を評価する上で重要な筋収縮の分類について基礎的な部分を紹介します。
以前から説明される筋収縮の分類としては、上図にあるように、関節動作を伴わない「静的」な「等尺性筋収縮(アイソメトリック コントラクション)」と関節動作を伴う「動的」な「等張性筋収縮(アイソトニック コントラクション)」の2種類が代表的なものでした。
「等速性筋収縮(Isokinetic Contraction:アイソキネティック コントラクション)」は、1960年代中頃、ニューヨーク大学 整形外科学教室とテクニコン社(Technicon Corporation)による共同研究が行われ、1967年に Hislop、Perrine、Thistle らによる新たな論文が発表され、初めてこの概念が紹介されました。
(参考論文1、2)
「等尺性筋収縮」と「等張性筋収縮」の状態は日常の動作中にある状態ですが、「等速性筋収縮」と言う状態は日常動作中にはなく、人為的に機械を介して作られるものです。
等尺性トレーニングや等張性トレーニング以上の高い効果を生み出すために、等尺性と等張性の利点と弱点などを踏まえ「等速性(アイソキネティック)」が誕生しました。これによって個別筋のトレーニングのみでなく、よりパフォーマンスとしての筋力評価やトレーニング方法の研究が進展したといえます。
近年の筋収縮(筋の運動)について述べられている殆どのものは、「等尺性筋収縮」、「等張性筋収縮」、「等速性筋収縮」が並べて解説されていますが、何世紀にも亘る運動療法の歴史の中で、アイソキネティックの理論が登場してから丁度半世紀を越えたことになります。
ここでは簡単にそれぞれの筋収縮様式の特徴を紹介します。
等尺性収縮
等尺性(Isometric)収縮:徒手筋力測定器 モービィ
関節運動を伴わない「静的」な状態での筋収縮です。
このため随意的な最大努力が可能で、この出力が抵抗となるため効率的かつ無理のかかりにくい運動形態としてトレーニングに活用されます。また特別な道具が無くても行える簡便なトレーニングです。
但し特定の関節角度での筋力トレーニングには良くても異なる関節角度ではその効果などが表れにくい可能性があります。
等張性収縮
等張性(Isotonic)収縮:
ウェイト方式トレーニングマシン コンパスシリーズ
関節運動を伴う「動的」な状態での筋収縮です。
一定の質量の抵抗(=ダンベルなど)を負荷として与える運動です。
この運動時に筋の長さが短縮しながら収縮する(求心性収縮)運動と筋の長さが伸張しながら収縮する(遠心性収縮)運動の両方が可能であり多様な負荷運動となります。
自重やウェイトなど簡単な道具でも実施でき、負荷レベルやその運動速度も自身で選択して運動が可能なトレーニングで古くから多くのトレーニングに関する研究成果が発表されています。
等速性収縮
等速性(Isokinetic)収縮:バイオデックス システム4
等速性運動制御が可能な機器:通称としてアイソキネティックマシンを用いた筋収縮です。
一定速度の回転運動のもとで上肢や下肢の運動中の全範囲に出力した筋力に応じた抵抗を与えることができるため安全で無理のない抵抗運動が可能です。
また設定速度を低速から高速まで変更できるため、その速度に応じたトレーニングメニューを行える点も特徴です。
スポーツ選手から傷害のある利用者など幅広い対象者に対してのトレーニングやリハビリテーションとして利用されており、その効果は1960年台後半以降数多くの研究成果が発表されています。
※次回以降それぞれの筋収縮と運動の様式についてもう少し詳細を説明します。
参考論文
1. Hislop HJ, Perrine JJ. The isokinetic concept of exercise. Phys Ther.47(2),114-117,1967
2. Thistle HG, Hislop HJ, Moffroid M, and Lowman EW.
Isokinetic contraction : a newconcept of resistive exercise. Arch Phys Med Rehabil.48(6),279-282,1967
関連製品
多用途筋機能評価運動装置
バイオデックス システム 4BDX-4
豊富なデータをもとに、多様な評価機能と快適な操作性を両立。
豊富な研究・臨床データをもとに開発。
世界中の幅広い対象者に利用されているので豊富なデータをもとに順次レベルアップ。より被験者に合ったやり方で多くの部位の評価ができます。
高性能ダイナモメータを採用。
最大角速度500deg/sec、最大トルク680Nmのワイドレンジを実現。フルスケールでの誤差が、トルク・速度で±1%以内、角度は1°以下です。
日本語で操作でき、抜群の操作性。
OSは「Windows 7(日本語版)」を採用。アプリケーションは完全日本語化されていて、扱いやすい操作環境です。
多様な情報をさまざまに解析可能。
トルク・関節角度・速度などの情報をリアルタイム表示し、時間軸による波形データ解析ができます。
得られた情報をもとにパワーや加速能力など多くのパラメータをデータ処理できるので研究に便利です。
外部機器へのアナログ出力(トルク、角度、角速度)機能を標準搭載。
タッチ入力機能により操作性が進化。
モニター画面に触れるだけのタッチ入力による操作を可能にしました。
操作をアシストする「ウィザードガイド」や「日本語ナレーション動画ヘルプ」も標準装備しました。
ポジショニングの設定、手順などを含むマニュアルDVDを標準装備しました。
徒手筋力計
モービィMT-100W//P/B
ハンドヘルドダイナモメーターの新スタンダード。
徒手筋力測定(MMT)による筋力評価を定量的に行うことができます
モービィは充電式バッテリーなので、どこへでも持っていくことができ、手軽に精度の高い筋力評価をおこなうことができます。
MMT3・4・5という表現では、被験者に伝わりにくい筋力をKg(f N・lbsの表示も可)で表示します。
3000名以上の日本人標準データとの比較が可能
2012年に発足したモービィプロジェクトでは、各筋力測定方法(ポジショニング)の構築、日本人の筋力データの集積、ワークショップ、セミナーの企画開催等を行っています。筋力データは、現在男女合わせて3000名以上、特に60歳以上は1200名を超えるデータが集まり、モービィプロジェクトのホームページより、性別、年代別の筋力データを手軽に比較することが可能です。
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モービィは表示部とプッシュセンサー部を分離することができます。
プッシュセンサーを各種オプションセンサーに交換することで、多様な評価が可能になります。
指導・介助のしやすさが認められたマシン
コンパス ZシリーズCOP-1201Z
TUV/ZAT認証を取得し、より高い安全基準をクリア
日本の高齢者の方々に安全に使っていただけるよう開発された世界的基準のトレーニングマシン
パワーリハ研究会の認証マシン
ラバー製ウェイトのウェイトスタック方式、シート高さ調節機能付など、日本の高齢者の乗り降りしやすさ、指導・介助のしやすさが認められたマシン
フィットネス向けトレーニングマシンとは異なる性能
①安定した軌道により反復運動が容易であり、正常な動作や筋収縮の再学習に適している
②ウェイトプレートの動きや音による聴視覚刺激がリズミカルな運動獲得に適している
③利用者と指導者の体格・体重差や運動機能の制限を受けずに運動の提供が可能
④姿勢や負荷などの再現性が高く、指導者のスキルの違いによる影響が少ない