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5. 痛みの悪循環

痛みの多くは,発痛物質が痛覚神経の末端の侵害受容器を刺激しているため起きる侵害受容性疼痛である.痛みが持続すると,侵害受容器は次第に過敏となる(末梢性痛覚過敏).これにより体内には発痛物質が産生されるが,その多くは血行障害が影響している.

また,さらに痛みが慢性化するのは,脳や脊髄後角で痛み情報が記憶されることによる生じるとされている.痛みが持続すると中枢神経機能や経験,記憶,不安,注意,集中,性格など,あらゆる要素が関与して痛み刺激の伝達がパターン化されてその伝達は強まる(中枢性パターン生成理論).

心理的,情動,葛藤(情動体験)などが生理的な身体変化を起こすのはきわめて通常の反応であるが,自覚された身体変化に過度な不安や恐怖をいだくと,それが情動刺激になってさらに痛みを強化してしまうという悪循環をつくりあげ,さらに刺激因子を持続化させる. これらは,やがては慢性・習慣化された身体反応として固定してしまい,些細な刺激,ときには本人に気付かれもしないような刺激によって,すぐ生じてしまうようなパターン化された身体反応を引き起こす.

したがって,適切な評価と介入により長期間痛みに曝さないことが何よりも肝要となる.